第606話 それぞれの会話の先に
「只でさえ先日の兵器の一件で中央が迷惑をかけているってのに」
「全くです。けど、これはある意味下剋上のチャンスなのでは?」
「彼等に疑問を抱かれては下剋上以前の問題が起こる」
司令官と女性の会話は終始この様な調子で続き、中央と言う部分に対する不満は根深い事を伺わせる。
一方、コンスタリオから通信を受けたオンディーズタウンの司令官は
「あの場所から通信を入れてきたという事は、彼等も遂に疑問を持ち始めはしたんだな……」
と何かを内心で考えていた。そこに
「司令官、先程の通信場所の裏付け、取れました」
と言う声と共に側近らしき存在が司令官に声をかける。すると司令官は
「有難う、その通信記録は此方に置いておいて」
と言い、通信記録を近くの机に置いて目を通せるようにする。
その直後その側近は
「今の通信、彼等が遂に疑問を抱き始めたんですね」
と先程の司令官の内心と同じ事を口に出していい、それに対して司令官も
「ええ、そしてこの流れを差し止めてしまう訳にはいかない、私達も彼等に対して出来る限りの支援をするわよ」
とコンスタリオ小隊への支援を全面的に行う事を決める。
「ええ、それが彼等の望みでもあるのですから」
「彼等って言い方をしてもいいの?貴方にとっては……」
「そうお望みなんですよ。特にあの方は」
側近らしき存在の言葉遣いに少し不安を口にする司令官、だが側近は構わないといった口調を見せる。そしてその口調と共に見えたその姿、それは明らかに魔神族の物であった。
「では、私も仕事に戻ります」
「彼にも伝えておくわ、愈々この戦争が大きく動く時が来たってね」
魔神族の側近らしき存在がそう言って下がると司令官は誰かに何かを伝える事を約束し側近らしき存在を下がらせる。
一方、拠点に帰還したコンスタリオ小隊は例によってこれまで得た情報を整理し、今回の収穫と疑問点について話し合っていた。
「司令官を通さない行動が許されているとはいえ、少し後ろめたい気持ちも……なくはないですね」
シレットがふとそう漏らすが、モイスは
「今更そんな事を言っても仕方ないだろ、それに司令官が裏側の可能性も高いんだから通せるわけねえ」
とぶっきらぼうな口調で話す。だがシレットの内心も理解はしていた。
「で、今回の調査だけど、やはりアルファタウンと同様、ベータタウンも明らかに不自然な点が幾つかあるわね」
「ええ、あの機械的で情を感じられない住民の対応、あれが複数あるというのはどう考えても不自然です」
コンスタリオの問題提起にシレットは明確に返答する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます