第589話 恣意的な酌量?

空弧の返答に疑念を抱きつつもコンスタリオ小隊は停めておいた飛空艇に乗り込み、そのまま拠点へと帰還する。

そして拠点へときかんしたのだが、その顔は何処か覚悟を決めた様な顔であった。少なくとも作戦が終わって安堵している様な顔ではない、険しさがありありと伝わる顔を浮かべたままコンスタリオ小隊は司令室へと向かう。

司令室に着くと司令官も又険しい顔を浮かべてコンスタリオ小隊を待っていた。


「皆さん、取り敢えずは兵器の迎撃に成功した事を良かったと称しましょう。ですが……」

「分かっています。私達は今回……」


司令の問いかけにコンスタリオが険しい顔のまま返答しようとする、だが司令は


「それ以上のお言葉は不要です、皆さんの行動ののち、キャベルの方にご確認を取りましたが今回の一件については緊急時の行動の範囲内につき不問に致すというお達しを頂きました」


とコンスタリオの返答に言葉を差し挟み、其れを聞いたコンスタリオ小隊は呆気に取られた表情を険しい表情に変わって浮かべる。


「不問にする……それは事実なのですか?」


コンスタリオが確認する様に問いかけると司令官は


「私も信じられず何度も確認しました、ですが返答は変わらずです、それだけ皆さんの事を高く評価されていると言う事なのでしょう」


そう語る司令の声は何処か不服そうであった、否、実際不服なのだろう。直接は言わずともその声と顔からは納得出来ないという雰囲気が容易く察知出来る。


「私からの伝達は以上です、本日はお部屋に戻り、お休みになられると良いでしょう」


そう告げる司令官の言葉は何処か投げやりな雰囲気も感じられた、もうどうにでもなれと思っているのだろうか?

其れを察したのかコンスタリオは


「分かりました、そうさせて頂きます」


と言って司令室を後にし、モイスとシレットを連れて自分の部屋に戻る。


「不問って……幾等何でも可笑しすぎやしねえか?良い事ではあるとは思うけどよ……」


そう語るモイスの言葉にコンスタリオとシレットも首を縦に振って頷く。


「ええ、今回私達は待機命令に反して出撃した、それが何を意味しているかは明らかである筈なのに……」


モイスの言葉に続けてシレットも疑念交じりの声を口に出す、その内容からコンスタリオ小隊が命令違反をして出撃したのは明らかであった。


「キャベルに態々確認を取っていると言う事は私達の行動が命令違反なのは承知している筈……にも拘らずこの行動……」


何か裏があるとコンスタリオが言いたいのに予測は必要なかった、その位この状況が不自然なのは明白であったからだ。

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