第590話 覚悟の理由
コンスタリオの言う通り、今回コンスタリオ小隊は兵器の侵攻当初出撃準備は整えたものの、待機を命じられていた。
「兵器が進行してきているのにどうして待機命令なんか出したんでしょう?作戦が終わっても……いえ、作戦が終わった今だからこそ猶の事理解出来ません」
そう語るシレットの顔はあからさまに疑念に満ちていた、自身の故郷が狙われていた状況での待機命令に納得出来ていないというのもあるが、それ以上に合点がいかない部分がある様子だ。
「北の大陸の出来事だから西大陸の此方は……という線も考えられなくはない。でもそれなら態々待機命令を出すのが不自然な話になるわ。北大陸が独自に迎撃するのであればそれを私達に伝える必要は無い筈だもの」
この状況に対し更なる整理を行うコンスタリオ、その顔は先程よりも更に険しさを増している。どうやらこの状況に対する疑念は相当な物の様だ。
「兵器の侵攻に居合わせている以上念の為って線は無くはない、けどそれにしたってやっぱ待機命令ってのは腑に落ちねえ、せめて近くでってんならまだ分かんなくもねえけど」
モイスもその口から疑念を口にする辺り、この作戦に対する疑念は単なる気のせいや考えすぎではない事を物語っている。
「ええ、そしてシレットの居ても立っても居られない様子を見て、私も腹を括った。
処罰は覚悟の上で出撃した、だけど何の御咎めもない……これは素直に喜んでいい話ではなさそうね」
此処でコンスタリオが先程から見せていた覚悟を決めた顔の理由を語る、今回コンスタリオ小隊は待機命令に反して出撃していたのだ、だが其れを不問とする決定、それに疑念を抱かずにはいられなかった。余りにも不自然すぎる決定であるからだ。
一方、魔神族側から今回の迎撃を担当した空弧もブエルスに戻り、謁見の間で例によって他の面々に作戦の顛末を説明していた。だが今回は空弧にも説明がなされていた。
「……コンスタリオ小隊に待機命令が出ていた?」
「そう、だからシレットの故郷が狙われていたにも関わらずコンスタリオ小隊が直ぐに動いていなかったんだ。
勿論正確に言えば動けなかったと言うべきなんだろうけどね」
涙名が話す内容に空弧は唖然とせずにはいられなかった、そのような命令を出す事自体可笑しな話であると言わざるを得なかったからだ。
「しかもその命令は西大陸の司令官の口を借りてキャベルから出されてる、勿論コンスタリオ小隊がそれを知る由は無いけど……」
そう続ける涙名の声には何処か情けなさの様な物が感じられた。
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