第585話 シレットの焦燥

一方、兵器を薙ぎ払いながら出現地点と思われる山頂に向かっていくコンスタリオ小隊はその途中で破壊された兵器の残骸を多数確認する。それを見てコンスタリオは


「この残骸……やはり今回も彼等が来ているの……」


と魔神族が既にこの戦場に介入しているのではと予想する。つまり、コンスタリオ小隊は空弧達がこの戦場に介入している事は把握していない。


「魔神族が既に来ていようといまいと私達がやる事は変わりませんよ!!この兵器をここから叩き返す、それだけです!!」


コンスタリオは声に出した訳ではない、だがシレットが直後に大声でそう言い放った事により


「!?声に出してはいないのに……シレットに考えを見透かされた?それとも無意識に表情に出していたの……」


と内心に多少の動揺を覚える。


「もうすぐ山頂に着く筈だ、だがその状況においても尚兵器が向かってこないって事は……」


モイスがそう言いながら直進していくとその前方ではコンスタリオの予想、そしてシレットの言葉通り空弧率いる魔神族と兵器が交戦していた。

その中に居る空弧の姿を見つけたコンスタリオは


「今回の指揮を取っているのはスターの体を奪った魔神族!?と言う事は兵器の迎撃を命じているのは魔王と言う事なの?」


と呟く。


「なら、兵器は魔王にとっても敵って事か、其れも人族より優先するべき敵って訳だ」


モイスはそう言いながら手にした機関銃で空弧達が交戦している兵器を破壊する。


「どっちにしても此処から先には逃がさないし通さない!!」


そう語るシレットの声は頼もしさもあるが、同時にコンスタリオは何処か危うさを感じていた。

単に故郷が狙われているからと言うだけではない、スターの姿を使っている空弧を見た事で一層内心が昂っているように見えたからだ。

其れを証明するかのように


「ライトニング・ガトリング」


と言って雷撃をシレットは乱射する。兵器のみならず魔神族や、下手をすればコンスタリオとモイスにもあたりかねない勢いだ。


「シレット、必要以上に焦っては駄目!!冷静さを保って!!」


コンスタリオはシレットに呼びかける。

だがシレットは


「私は冷静です!!現にこうして兵器を迎撃しています!!」


と明らかに言葉と行動が矛盾している。其れを証明するかのようにその直後背後から接近していた兵器に虚を突かれ、完全に隙だらけの背面を晒す事になってしまう。

シレットがそれに気づいた時、兵器は既に攻撃態勢に入っていた。


「なっ!?しまっ……」


と動じた声をシレットは上げる。

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