第582話 次なる侵攻

「シレットって、以前私が身柄を拘束したあの少女よね?その子の故郷の近くに兵器が……」


その言葉を聞き、空弧も動揺した声を上げる。

星峰の嘗ての記憶を共有しているというのも影響しているのだろうが、彼女の動揺は明らかにそれだけでは無いように感じられた。


「モスシアタウンの近くに出現したのは偶然かもしれないけどこのまま放置しておいたら大変な事になる。直ぐに迎撃を……」


天之御がそう言いかけた時、地図上に熱源反応が幾つか表れ始める。


「地図上に熱源反応が更に多数、これは……人族部隊です」


画面を直視しながら岬がそう告げ、他の面々も画面を直視する。するとそこには確かに人族部隊の反応が出現し、兵器の出現方向に向かっていた。


「兵器の迎撃に当たるつもりなのでしょうか?でも一体何処の部隊が……」


その光景に涙名が困惑した表情を浮かべる、如何やら協力者側の人族部隊が迎撃するという情報は入っていない様だ。


「人族部隊と兵器、間も無く接触します」


岬がそう告げるのと同時に人族部隊と兵器の進路は重なり、双方はそこで足を止める。如何やら交戦状態に入った様だ。


「何処の部隊かは分からないが、少なくとも一緒になって侵攻してくるという訳ではないみたいだ。ならこの隙を突いて侵攻元を叩く!!」


天之御がそう宣言すると空弧が


「その指揮は私に取らせて下さい!!」


と涙名や星峰を差し置いて口火を切る。


「空弧!?一体どうして……」

「貴方の……星峰の友人であるならその体を使っている私が行くべきよ!!そうすればきっと……」


珍しく動揺した声を上げる星峰に対し、空弧は何時もの星峰を思わせる冷静さを見せる、恐らくはそうする事でシレットも来ると考えているのだろう。

それを察してか知らずか、天之御は


「分かった、今回は空弧に任せるよ」


とその申し出を受け入れ、空弧に出撃を許可する。

すると空弧は


「有難うございます!!」


と深々と頭を下げる、それを見た天之御は


「既に迎撃部隊は指揮官以外揃ってる。他の面々も状況によっては出撃してもらうかもしれないからここで待機していて!!」


と告げた後、転移妖術で空弧と迎撃部隊の兵士を現地へと転移させる。


「空弧の言いかけた事は分かる……この光景を見てシレットなら必ず出撃しようとするはず……それが出来ない状況にあるの?」


星峰の内心にはこの状況に対する、そしてシレットに対する疑問が渦巻いていた、それはシレットの事をよく知るが故にである。

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