第563話 強要される茶番
「それは分かりましたが……此方側も全くの無傷という訳ではないのでしょう、その穴を埋める目途はついているんですか?」
自身の中にある疑念故なのか、司令に対して疑問をぶつけるコンスタリオの言葉は何処か棘がある様に響く。それを聞いて司令官は
「それは南大陸の部隊の方々が検討されている事でしょう。今の私達には知り得ない事です。ですが確かに皆さんの言う通り、無傷という訳には行かないでしょうね。
そこを魔神族に突かれない様に今後警戒を強める方針であるとは言っていました」
とコンスタリオの質問に答える、だがその返答はやはりどこか取り繕っている様にも聞こえる。その様子を見てコンスタリオは
「……分かりました。では私達も警戒を強めておきます」
と告げ、シレットとモイスを連れて司令室を後にする。
「……全く、とんだ茶番劇ね」
其れを確認した直後、柱の陰からアンナースが姿を表すと同時にそう呟くと司令は
「……他にどんな対処法があるっていうんです……」
と不満げ且つ疲労した顔を浮かべながらアンナースの小言に文句をつける。その様子から先程の会話が茶番劇であると言う事は司令官本人も承知している様だ。
「……そうね、確かに茶番劇を演じる以外に方法はなかったのかもしれない。全く、中央の連中も厄介な事を引き起こしてくれる物よ。立て続けに虎の子を起こした挙句、彼等に更なる疑念を抱かせるんだもの」
そう語るアンナースの顔は明らかに不機嫌であった、それだけ彼女も今回の中央と呼ぶ存在の行動には不満を抱いていると言う事なのだろう、だが其れを聞いた司令官は
「……お言葉ですが、今回の一件は本当に中央の本意なのでしょうか?」
とアンナースの発言に疑問符をつける。それを聞いたアンナースは
「……どういう意味なの?」
とその真意を問いかける。すると司令官は
「つまり先程の襲撃は中央全体の意思ではなく、何らかのトラブルも関わったのではないのかと言う事です。そうでなければ流石に連続して大規模な侵攻を何の考えも無しに仕掛けたりはしないでしょう」
と返答する。それを聴いたアンナースは
「……そうね、確かにその可能性も考えられなくはないわ。一度確認を取る必要があるわね。そして、事と次第によっては……」
と静かに顔を下に向け、その顔に薄ら笑いを浮かべる。
一方、自室に戻ったコンスタリオ小隊も又今回の一件について話し合っていた。
「さっきの司令の言葉遣い……明らかに不自然でしたね」
そう呟いたのはシレットだった、やはりそう思わずにはいられなかったのだろう。
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