第540話 五里霧中の横槍
コンスタリオの言葉に対し、モイスはその場は言葉を引っ込める。それ以上続けられる言葉が無かったからだ。だがその内心では少なからず動揺が残っていた。シレットとコンスタリオが告げた司令の周辺を調べると言う事は二人が司令を信用していないのではないか、そう思えたからだ。
無論、モイス自身も司令に対して疑念が無い訳ではない、だが今の状況でそんなことをすれば人族内部にいらぬ混乱を招くのでは無いか、そう懸念した為にこの発言が口を突いて出てきたのだ。
「ただ、調べると言ってもどこから調べます?堂々と来歴を聞いた所でまともな返答が来るとは思えませんし」
「なら、まずはその記録から探ってみましょう。仮に何か詐称があったとしたらそこから突き崩していく事が出来るわ」
モイスの懸念を知ってか知らずか、シレットとコンスタリオは司令の近辺を洗い出そうとする準備を始めようとする、だがその瞬間、其れを邪魔するかのように本部内にサイレンが鳴り始める。
「もう!!せっかく今後の方針が決まったっていうのに!!」
不満気な声を上げるシレット、そしてそれに続いて聞こえてきた警報の理由は
「現在、火山地帯より火山とは異なる熱源を多数感知、反応数から見て兵器と考えられます。その進行方向に人族側のエリアが複数入っており、火山地帯で迎撃する為にここからもある程度の戦力を派兵します」
という物であった。それを聞いた三人の表情はすぐさま変わる。
「火山地帯から兵器!?でもあそこは大分前に魔神族の幹部が立ちいってから誰も向かっていなかった筈……」
「密かに魔神族が入り込んだのか、それとも……だが、なんで今になって兵器が起動したんだ?」
「今はそれを話している暇はないわ。敵が兵器であるならある意味魔神族以上に放置は出来ない。直ちに迎撃する必要があるわ」
一通りの会話を交わした後、コンスタリオ小隊は迎撃の為に出撃場所へと向かう。そこには既に出撃準備を整えていたアンナースの姿もあった。
「アンナース、貴方も出撃するの?」
「ええ、兵器が相手であれば皆さんより私達の方が経験を積んでいますから」
コンスタリオに対し自信のある表情を見せるアンナース、だがコンスタリオはその顔に何処か違和感を覚える。自分でも良く分からない、だが何か違和感がある、そう思わずにはいられなかった。
そうした疑念を抱きつつもコンスタリオはシレット、モイスと共に飛空艇に乗り込み、戦場となる火山地帯の麓へと急ぐ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます