第538話 証拠がないのも又証拠

そのままコンスタリオ小隊はタウン内をくまなく散策し、所々で住民には会うものの、何れの住民もコンスタリオ小隊が話しかけてもけんもほろろと言った対応しか行わず、有力な情報を得る事は出来ない。


「何かまるで手応えがありませんね。住民は居るけど何も得られない……」


流石にシレットも苦痛に感じてきたのか、それともイライラしているのかは不明だがぼやき始める。だがそんなシレットのぼやきや


「ええ、確かにそうね……」


と言う返答とは裏腹にコンスタリオの内心は何かを確信しているかのような発言をする。自身のぼやきに神経が集中していたシレットは気付いていないようだが。

そのまま時間が来た為、コンスタリオ小隊は飛空艇に乗り込んで拠点へと戻る。戻った後も特に司令から何かを聞かれると言う事もなく、そのままコンスタリオの部屋に集まって今回の一件について話し始める。


「アルファタウンでは殆ど得る物がありませんでしたね……この調子だと他のタウンも得る者があるのかどうか……」


シレットの言葉からは今回の一件についてのあからさまな不満が感じられる。だがコンスタリオは


「ええ、確かに住民からは何も得られなかったわね……だけどこの場合、何も得られなかった事が何かを得る事になるかもしれない」


と一見すると矛盾する返答をする。それを聞いて


「一体何を言っているんだ?」


と当然の疑問を口にするモイス、矛盾した回答をしているのだから当然と言えば当然の反応ではある。それに対しコンスタリオは


「あのタウンの住民と話していて、はっきりとは言い切れないけど私は妙な違和感を感じたの。機械的と言うか、無関心すぎるというか、そういった類のね」


と告げる。だがその返答も又


「それが一体如何したというんです?結局情報は……」


とシレットを困惑させる。少しイライラしている様にも見えるその言葉遣いは普段の彼女からは想像しがたい物であった。それを見て流石に焦らせないと思ったのかコンスタリオは


「つまり、タウン全体で大きな隠し事をしていて、それを隠し通す為に迂闊な発言をしない様にしてるのではないか、そう思えるのよ」


と自身の考える結論を伝える。だがその内心では


「或いはその逆でその隠し事を隠す為にあの住民が作り出された……そんな技術が存在していればの話だけどね」


と別の結論も出していたのだが。


「つまり、あのタウンにはやはり何かが隠されていると考えられると?」


少し頭が冷静になったのか、シレットはそう問いかける。するとコンスタリオは


「ええ、それもタウン全体で隠そうとする程の何かがね」


と続け、笑顔を見せて頷く。

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