第537話 押して駄目なら退くべきか?

コンスタリオ達は示されたままに軍の司令官が居るという施設へと向かう。其処は街の規模とは裏腹にしっかりとした軍事施設として建設されている様な印象を受け、殺風景で人の陰が無い外部との違いを一掃際立たせていた。


「ここは流石に施設として機能している様だが、それ故に何だか物々しいな」

「そうね。まるで何時戦が起こっても不思議じゃないって空気が全体を包んでいるわ」


シレットとモイスが揃ってそう口にする。それだけ異様な雰囲気がその施設には流れていたのだ。

周囲を見渡し、施設の中に入ろうとするコンスタリオ、すると


「おや?本日は来賓のご予定は無い筈ですが、貴方方は?」


と一人の兵士に呼び止められる。軍事施設と言う目的上来客をそのまま上げる訳には行かないというのは当然の事なので


「急な来賓は失礼します。私は……」


とコンスタリオは自分達の身の上を兵士に説明する。だが兵士は


「そうですか……ですが生憎司令は現状手が離せない状態でして……」


と返答してくる。それに対しシレットは


「少しのお時間だけでも駄目なのですか?」


と食い下がろうとするが兵士は


「ええ、司令は気難しい方でして、何かに集中し始めると私達の声も届かなくなってしまうのです」


と言う。するとコンスタリオは


「分かりました。そもそもいきなり訪れた私達にも問題はある訳ですし、今日の所は失礼致します」


と言い、シレットとモイスを連れて施設の外へと退散していく。


「何故引き下がるんです?兵士にもう少し……」


引き下がったコンスタリオに不満気な顔を向けるシレット。


「あの兵士が言っている事が虚言であるにせよ、事実であるにせよ今ここで私達が強引に自分達の主張を通してアルファタウンとの関係を悪化させるのは得策ではないわ。ここは潔く退いておいた方が後々プラスになる可能性が高い」


そんなシレットに対し現状における最善の策だと言って自身の行動を説明するコンスタリオ、だがその直後の


「それは、そうかもしれませんけど……じゃあこのまま帰るんですか?」


と言うシレットの言葉からシレットが納得していないのは容易に想像出来た。そんなシレットの心境を読み取ったのかコンスタリオは


「いいえ、このまま帰るつもりはないわ。折角来たのだからもう少し街中を調べていきましょう。それに住民も全くいないわけでは無いのだから、もしかしたら何かつかめるかもしれないわ」


とタウンそのものの調査は続けるつもりである事を話し、其れを聞いたシレットは取り敢えず納得したような表情を見せる。

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