第531話 名前が示す意味
その口火の切り方はまるで今か今かとそれを待ち望んでいたようにも見える。
「早速だね、一体何を話しておきたいの?」
天之御が話す様に促すと星峰は
「昨日の戦いの最後の瞬間、あの要塞に止めの一撃を与えた時、私の中に膨大な記録が流れ込んできたの。まあ、その流れ込んできた理由は聞かれても困るけど、重要なのはそこではなく、その記録の中身なの」
と話す。最初の部分だけでも既に疑念を感じずには居られない話が始まっているが、星峰自身も分かっていないのは明らかである為、他の面々も敢えてそこには触れない。それを察しているのか、星峰は
「その記録の中に記述されていたのよ。ユダヴェ様ってね」
と続ける。その言葉を聞いた瞬間、その場に居た全員の顔色が変わる。
「ユダヴェだと!?その名前は……」
「人族が信望する神の名前であり、魔神族が最も忌むべき存在として捉えている存在の名前でもある……」
驚愕した声と表情を浮かべる八咫、それに続く涙名の言葉も一見落ち着いているように見えるがその中には少なからず動揺が感じられた。
「星峰、君の中に流れ込んできた記録と言うのは?」
天之御はそう問いかけ、星峰に記録について話す様促す。促されるままに星峰は
「恐らくあの要塞に変貌した装置に記録されていたデータや日記の類だと思うわ。兵器についての情報やあの廃墟についての情報もかなり流れ込んできたもの。
だから、あの廃墟がどうして生まれてしまったのか、其れも分かる」
と話し、そのまま
「あの街はやはり戦争で廃墟となってしまったの。けどそうなったのは兵器の侵攻によるものではなく、劣勢に陥ったあの街の軍が形成の逆転の逆転を狙って生命を半ば強制的に兵器に憑依させる禁忌に手を染めたからよ」
と続ける。その言葉にその場に居た全員が顔を更に歪め、言葉を失う。それが残虐非道な行いであることはその場に居る全員が分かっているが、それが行われたという現実も又存在しているからだ。
「そんな事が……そんな事が行われていたなんて……それじゃ、あの許さないって言葉は……」
「直接それを行った者達への物なのか、事態を引き起こした存在に対しての物なのか、それは分からないけど、この一件に起因しているのはまず間違いないわね。そして無理矢理に怨念にされているような状態で猶彷徨っている、そんな状態よ」
空弧の動揺に何時もと変わらない様な返答を返す星峰、だがその言葉には微かに、しかし確実に怒りが少なからず込められている様にも聞こえる。
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