第530話 一時の眠りの先に
一方、渦中の星峰はと言うと自室に戻って剣の宝石部分を見つめていた。宝石の色は白金に変化したままであり、以前の色に戻る気配はない。
「宝石の色は変化したままね……これはこれまでもだけど、一体この剣には何が秘められているの……」
そう言って剣を見つめる星峰の顔には普段からは想像出来ない程の不安が感じられた。否、不安ではないのかもしれない。だがその感情が明らかにマイナスの物である事はその顔から見て明らかであった。
「それにあの時、あれは……」
そういうと星峰は何かを考えだす。その内心に秘めた不安はその考えに起因しているのだろうか?だがそう簡単に答えが出せる筈も無く、考えは袋小路に入ってしまう。
「……駄目ね、今のまま考えても仕方ないわ。折角休ませてもらえているのだし、ここは……」
そう言って星峰はすっと立ち上がり、そのまま衣服を脱いでシャワーを浴びる。そしてシャワーを浴び終えると寝具に着替え、そのまま床へと着いて両目を閉じ、そのまま深い眠りへと落ちていく。
一方、星峰と同様、今回の一件について考えている者もいた、空弧である。
「私の一族の力と星峰の件、一体どんな繋がりがあると言うの……血筋を断ち切って尚私達を苦しめる力……本当に因果な物ね……」
そう呟くと空弧は手元の機器を操作し始める。どうやら何処かへアクセスしようとしている様だ。
そのまま機器を操作していき、様々な場所へのアクセスを試みるもののその険しい顔が変わる事は無い。
「ここにも無い……ここにも……」
どうやら探し物が見つからないであろう事はその言葉から容易に想像出来る、だがそれでも空弧は手元を動かすことを止める事は無い。それだけ必死なのだろう。
だが其れを繰り返していくも疲労には勝てなかったのかその瞼は徐々に重くなっていく。
そして翌日、何時もの様に目を覚ました星峰が謁見の間に向かうとそこには既に天之御達が揃っていた。
「星峰が最後と言うのも珍しいな。やはり機能の一件で疲労しているのか?」
八咫が少し心配そうな声で星峰に話しかける。すると星峰は
「そうかもしれないわね。正直、昨日のあの現象は自分自身でも不安を感じずにはいられないわ」
と少し弱音交じりの返答をする。それ程異質な現象なのだろうか。その返答に周囲も不安な顔を浮かべるが、天之御はそれを目にしつつも
「それじゃ、昨日の事について話しておきたい事はある?」
と問いかける。今ここでその不安について話しても仕方ないと自覚しているからだ。
その言葉を皮切りに星峰は
「ええ、あるわ」
と口火を切る。
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