第501話 疑惑の部隊

「これは……どういう事なの……」


画面に見入るコンスタリオだがその声は明らかに動揺を、否、それを通り越して驚嘆の域に達する音域を含んでいた。だがそれも無理はない話である。何しろ目の前のモニターの画像にはスターの姿が映し出されていたのだから。


「どういう事なのこれは……この画像記録は今回の一件での松波街防衛部隊の戦闘記録で撮影された物の筈……それにどうしてスターの姿が……」


余りの動揺にコンスタリオの表情も、その素振りも困惑を隠せない。そこに


「隊長、どうかしたんですか?」


と言うシレットの声と共にコンコンと扉を叩く音が聞こえてくる。その音で少し落ち着きを取り戻したのか、コンスタリオは


「え?いえ……一寸待って」


一瞬何でもないと言いかけるコンスタリオだが、直ぐに自身の考えを翻しシレットを部屋に招き入れる事にする。この事は知っておいてもらった方が良いと考えたからだ。

直ぐに椅子から立ち上がり、扉に向かってノブに手をかけるコンスタリオ、それを合図にしたかのようにシレット、そしてその後ろにいたモイスも入って来る。


「モイスも居たのね、どうして此処に?」


自身の部屋の扉を叩いた事を訪ねるコンスタリオ、するとモイスが


「否、シレットと二人で今回の作戦について話してたんだけど煮詰まっちまって気分転換に外を歩いてたら隊長の大声が聞こえたんですよ」


と返答する。その返答にコンスタリオは少し恥ずかし気な顔を浮かべる。そこまでの大声を出していたとは正直思っていなかったのだ。


「そうなの……それは心配をかけたわね。でも、勿論それだけの理由があるの。二人にもそれは知っておいてほしい。これを見て」


そういうとコンスタリオは先程自身がみた画像を見せ、更にその画像がどこでどのように撮影されたのかを説明する。


「あの戦場に魔神族の幹部が!?でも、それじゃ……」

「そう、松波街の部隊に殆ど被害が出ていないという事はあり得ない。彼等はたとえ一人でも松波街の部隊に甚大な損害を与える可能性は……いえ、少なくとも無傷で済む筈がないわ」


説明を受けたシレットもやはり困惑した声を上げる。やはり無理もない事なのだろう

。声にこそ出していないものの、モイスも同じような顔を見せている。


「ええ、にも拘らず松波街の部隊は殆ど被害を受けて居なかった。私達の部隊も向かわせた以上、魔神族が部隊に成りすましたとは考えにくい。その結果として残る可能性は……」


その仮説は立てた本人自身も到底信じられないものであった。

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