第474話 黒羽秘術
「あの数の兵器を突破か……だが正面突破は余りにも無謀すぎる。せめて数が少ない出入口を探せればいいんだけど……」
何時になく慎重とも臆病とも取れる発言をする天之御、だが兵器が学習能力を有しているという事が分かった以上、それも致し方ない事ではあった。迂闊に交戦経験を積ませるとここからブント以上の脅威が生まれるかもしれない、そう考えていたのだ。するとそこで八咫が
「……あるぞ。交戦を最小限に抑えつつ施設の外に出る方法が」
と呟く。その声に
「えっ!?」
と空弧が言ったのをきっかけにその場にいた全員が八咫の顔に視線を向ける。
このタイミングで八咫がこうした発言をするとは思っていなかったのだ。否、正確に言えば発した事も無かった。その顔には気付いていないのか、気に留めていないのか八咫は
「その方法は……」
と言葉を続ける。八咫の言葉を聞き終えると天之御は
「成程、確かにその方法をやってみる価値はありそうだね」
と納得した表情を見せ、他の面々もそれに同意したのか首を縦に振って頷く。すると一同は早速行動を開始し、その場から離れていく。
そしてこのエリアに入って来た入り口に戻るとそこは既に目の前が兵器で埋め尽くされていた。
「これだけの兵器がこの施設内に存在していたなんて……今作り出されている物が居ると考えても背筋が寒くなるわ……」
岬が思わずそう零してしまうのも無理はない。目の前には今までのどの先史遺産よりも、どの人族、魔神族施設よりも多く、性能も高い兵器が生命の細胞の様に所狭しと、しかしぶつかり合う事無く揃っていたのだから。
「皆、手筈通りに行くぞ!!」
八咫がそう叫ぶと一同は改めて頷き、兵器の居る入口へと走っていく。そして入り口を全員が同時に出たと同時に
「黒羽秘術……風切りの祝福!!」
とこれまで口にした事の無い黒羽秘術と言う枕詞を置いた妖術を唱える。すると一同の背中に八咫と同じ黒い羽が出現し、その羽は一同を飛翔させ、兵器の居ない上空へと移動させる。
「凄い……全員が同時に飛行してる。これなら……」
そういうと安堵の表情を浮かべかける岬だがその直後バランスを崩しかけてその顔が焦ったものになり、八咫にその手を掴まれる。
「集中力を絶やすな。落ちたら台無しになる」
手を掴み、体制を立て直しながらも岬を叱責する八咫、岬もその心境は察したのか
「御免なさい、油断したわ」
と素直に非を認める。そしてそのままバランスを立て直し、一同は施設の外側に近付いていく。
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