第473話 相反するシステム

「つまり、怨霊として憑依するようになってしまったのはそこで何らかの不具合が生じてしまったからと言う事?」

「不具合が生じたのが兵器なのか、それとも生命なのかと言う疑問点は残るものの、もしこの仮説が的中しているとしたらその考え方でまず間違いないと思うわ」


天之御の疑問を交えた問いかけに対しても星峰はペースを乱す事無く返答する。それは自信の表れなのか、それとも……

その後も星峰はデータの調査を続け、それを次々と分析していく。そしてあらかたを調べ終えたのか、機械の目の前から起立する。


「どうしたの?データは取り終えたの?」


突然立ち上がった星峰に空弧が問いかける。すると


「ええ、やっぱりなかったわ。例の怨霊として憑依する装置についての記録は。そして、それを力に変える技術についての記述もね」


と星峰は返答する。それを聞いた天之御は


「つまり、その技術だけは此処で作られたものではなく、外部の先史遺産で独自に作られ、搭載されたって事か」


と仮説を早々に組み立てる。その仮説に対し


「ええ、そもそもここで生み出された生命は生命として生きる事を目的として生み出されている。怨霊と化してしまうのはそれと真逆としか言いようがないからその点もあるのかもしれないわね」


と星峰は肯定しつつ、更なる仮説を繋げる。


「で……どうするの?あの生産プラントを破壊するの?」


そう涙名は星峰に問いかける。だがそれに対する星峰の返答は


「現時点ではそれは得策とは言えないわね」


と言う先程までとは全く違う物であった。その返答に対し


「得策とは言えないって……どういう事だ?」


八咫がそう聞くと


「今調べてみたのだけどあの大本の耐久性は並大抵の物ではないの。今の私達が全力を出し切っても壊せるかどうかわからない。それにあそこに近付けば当然の事ながら生産直後の兵器からの集中砲火に晒される事になる。それは非常に不味いわ」


と星峰は返答する。その顔は真剣であり、それが危機感を持っている事を物語っていた。


「つまり、現状では放置するしかないって事か……」


涙名がそう呟くと星峰も


「ええ、残念だけどそうするしかないわね。しかも帰り道も簡単にはいかないわ。この施設には転移妖術を阻害する見えない障壁が展開されてる。外に出ない事には転移妖術は使えないわ」


と言葉を続ける。それを聞いた一同は少なからず困惑した顔を見せる。外に出るとなるとあの兵器の群れを突破しなければならないからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る