第460話 堅牢な揺り籠

「何これ……ここで赤子の保育を行っていたの?」


これまでの施設、ここまで来るのに繰り返してきた戦いの光景とはあまりにもかけ離れた光景に天之御も驚きと困惑を隠せない。それ程までにこの部屋の光景は一同には異質に映っていた。特に武器等が隠されている訳でも無く、それらしい物と言えば玩具としての剣や銃が箱の中から少し見えている程度だ。


「玩具の銃や剣はあるけど、これで兵士を育成しているって雰囲気じゃないね。寧ろ子供なら触っても不思議は無いけど、これだけで興味を持つという訳でも無いかな」


涙名がそう告げると他の面々もそれに首を縦に振って納得する。この事実からこの部屋は兵士の養成の為に作られた物でない事は明らかであった。


「他に目立つ物は無いみたいだし、外に出て探索を続行しよう」


と天之御が告げた事で一行は取り敢えずその場を後にし、施設内の捜索を再会する。だがこの部屋の存在は一同に少なからず疑問を残していた。兵士の育成ではない、それ以外の保育目的が先史遺産にあるのかと言う疑問を。

それから一同が足を進めると又別の扉を見つける。


「また扉がありますね、ここも調べますか?」


岬がそう尋ねると


「ええ、何が出て来るかは分からないけどね」


と星峰が言葉を続け扉を開ける。するとその中には以前にも見た事があるカプセルが大量に並んでいた。それを見て八咫が


「おい、これって……」


と言うと星峰は


「ええ、これまでの先史遺産でも何度も見て来た光景ね。人工生命の製造装置」


と淡々という。だがその淡々とした口調は逆にこの光景に対する星峰の嫌悪感を現している様に一同には聞こえていた。だが


「けど妙ね。ここのカプセルはどれも綺麗に形が整えられてる。機能は停止しているようだけど、動かそうと思えば動かせるレベルね」


と星峯自身がこれまで見て来た同じカプセルとの違いを口に出した事で他の面々が感じていた緊張感は少しではあるものの解れる。


「と言う事はつまり、この施設は破壊されたのではなく、単に機能を停止しているだけと言う事?」


空弧がそう口にすると天之御は


「ここまでの状況から察するに、その機能停止も住んで居る生命が居なくなってしまった為に起こった物だろうね。最も、これ程の高度な文明を築く事が出来た生命がどうしてそんなことになってしまったのか、その点が疑問としては残るけど」


と続ける。そう話す天之御の疑問を明らかにするかのように星峰は近くにあった操作端末を起動し、そのデータを調べ始める。

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