第459話 疑念の先の疑問

それに続くように


「ええ、此れは今までの先史遺産とは違うわ」


と星峰が言った事でその場に居た全員の緊張が一気に高まる。これまで星峰が発した言葉が外れた事は無かったからだ。だが


「それは分かりましたが、具体的に何が違うんですか?」


と言う岬のもっともな問いかけに天之御も星峰もふと顔を変える。どうやら肝心の説明をしていない事を失念していたようだ。


「説明が遅れたね。この施設に使われている技術は確かにこれまでの先史遺産で見てきた物だ。だが細部が異なっている。

具体的には破壊されにくくなっていたり、より効率的、合理的に稼働出来る様になっていたりね」


天之御がそう説明すると他の面々も納得した表情を浮かべる。どうやら合点は行ったようだ。


「つまり、ここにある技術はこれまでの先史遺産より改良が加えられていると言う事ですか?」


空弧がそう語ると星峰は


「空弧の言う仮説か、或いは他の先史遺産で使われている技術が此処の劣化品であるか、そのどちらかだと思うわ。そして、どちらであるにしてもここは先史遺産にとって非常に重要な施設である事はもう疑い様の無い事実となる」


と続ける。


「他より高度な技術が使われているのであれば、そうするだけの理由がある。そういう事だね」


涙名がそう話すと星峰は頷き、その考えである事を暗黙に告げる。


「しかし、そうだとすると……一体ここには何が眠っているんだ?」


そう告げる八咫に天之御は若干の安心感を覚える。何時もの調子に戻っていたからだ。自身の故郷がある方角である事は確かだったが、それが杞憂だと思う事が出来たのだろう。天之御はそれを気取られぬ様、僅かに変化した表情をそっと戻して


「それを調べる為にも奥に進もう」


と言い、一同を奥へと向かわせる。しかし奥へ進むものの、ここまでの度重なる兵器の襲撃、他より高度な技術が用いられているという事実とは裏腹に兵器による迎撃は一向に行われない。


「妙ですね……兵器が一向に現れません。ここが他より重要な場所であるならここまで何度来てもよい筈ですが……」


空弧がそう口にするが、口にするまでもなく一同はその疑問を感じていた。だがその直後、涙名が見たとある部屋が一同を更なる疑問へと誘う。


「あれ……一体何なんでしょう?」


遠方に見える扉を見つけた涙名がふと口にすると天之御は


「扉みたいだね、行ってみよう」


と言い、その扉に一同を向かわせる。そして向かった先は玩具や絵本等が散乱しており、宛ら託児室の様であった。

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