第457話 日常に潜む刃
「だけど言葉を発して直ぐに靄は消えたわね。あれは一体どういうことなのかしら?」
星峰がそう口に出すと他の面々も考える。だが天之御は見逃していなかった。先程靄が消滅した時、星峰の剣の宝石が輝いていたのを、そしてそれに星峰は明らかに気付いていたのを、今の星峰の声がどこか演技がかっていたのを。
だがその点を問いかけてもいい返答は得られないと言う事も分かっていた為、あえて触れる事無く天之御はそれを見逃す。
一同が更なる奥地へと進んでいくとそこには明らかに生活空間と思わしき光景が広がっていた。店舗やビル、住居が立ち並ぶその風景は自分達の世界の街と比べても遜色ない光景が広がっている。否、寧ろ光景に使われている技術を見れば自分達の世界より数段上を言っているのではないかとさえ思えてくる。住民が一人もいないという点を除いては。
「この技術……今更だけど、先史遺産は本当に今の世界の技術を遥かに上回る技術を擁していたみたいね」
そう呟く星峰の声は関心が多く感じられた。恐らく技術に対する興味もあるのだろう。こんな状況でなければ心行くまで調べてみたい、そんな気持ちが感じられた。
「でも、それ程高度な技術を持っているのにどうして住民は全滅してしまったんでしょう?これ程の技術があるのなら住民を助ける技術も発展していたでしょうに……」
そう岬が疑問を口にすると
「技術が発展しているのに……ではなく、発展した技術を手にしていたからこそ全滅してしまったのかもしれないね」
と天之御が続ける。それに八咫や空弧が頷き、その考えに同意している事を伝える。
だがその時、近くにあった電柱やマンホールから例の靄が噴出し始める。
「何っ!?これは……」
そう声を上げた八咫を始め、思わぬ所からの靄の出現に動揺を一同は隠し切れない。その靄はそのまま電柱やマンホールを包み始め、その姿を兵器へと変えて動き出す。
「電柱やマンホールが兵器に!?」
その奇想天外な光景に目を疑わずにはいられない岬、だが星峰は
「いえ、兵器に変貌したのではなく、兵器が電柱やマンホールの役割も果たしていた。つまり、擬態していたのよ」
と冷静にその状況を分析する。
「日常生活に擬態する兵器……どうやら先史遺産が抱える暗部は僕達の想像では測りきれない程深いみたいだね」
天之御も又、この光景からその危険性を改めて認識したようだ。父から教わり、見てきた筈の先史遺産だがその根深さに思わず舌を巻く。
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