第455話 亡霊を消す白

星峰の言葉に応えるかのように目の前の兵器は黒い靄を出し、何時もの領域へと引きずり込もうとする。だがそれをみた星峰が


「純白浄化!!」


を使うと靄は瞬く間に消えていき、周囲には先程と変わらない風景が現れる。


「今のって、この前の戦いで使った技だよね。って事はつまり……」


何かを予感したのか、涙名がそう口にする。すると星峰は


「ええ、あの靄は憑依している悪霊達の力を増幅させる力を持っているの。でももうそれは通用しない」


と言いながら剣を抜き、兵器に接近してその接合部分を瞬く間に切り落としていく。そのスピードは圧倒的であり、他の面々はただ呆然と立ち尽くしていた。それを見た星峰は


「ほらほら、見てないで!!兵器はまだ来ているんだから」


と言って進行方向上を指差す。すると星峰が言った通り、兵器がわらわらと集まって来ていた。そしてその兵器達も又靄を出現させようとする。だが今度は星峰が何も宣言していないにも関わらず消滅していく。


「靄が出現することなく消滅した?星峰の力は持続しているの?」


岬が思わず口にした疑問、だがそれは他の全員も抱いていた疑問だった。それを見て空弧は


「恐らくはそうだと思います。星峰から力を感じます……それも、今までよりも明らかにパワーアップして」


と告げる。かつて自分の体だったにも関わらず全く知らない妖術を使う星峰を見て空弧は


「星峰……あなたは一体何者なの?」


と一抹の不安を抱く。だがそんな事を悠長に考える時間を兵器が与えてくれる筈も無く、兵器は一同目掛けて機関銃を乱射してくる。それをかわし反撃に出る一同、その先陣を切ったのは


「へっ、考え事をする時間すらも与えてくれねえって事かい!!」


と勢いよく飛び出した八咫であった。八咫はそのまま兵器に向かって飛翔すると


「黒羽の刃……こいつで真っ二つだ!!」


と言って羽を鋭利に尖らせ、兵器を次々と切り裂いていく。その活躍もあり、八咫が足を地面につける頃には全ての兵器が切り裂かれ鉄屑と化していた。


「これで討ち止めみたいだね。それに兵器が出てきたという事はやっぱりこっちの方に何かあるのかもしれない、急ごう」


そう告げる天之御の声に従い、一同は足を動かして更に先へと進んでいく。だが天之御の目は絶えず八咫を視界に居れており、且つ不安げな視線と表情であった。


「八咫……やはりその内心は……」


八咫の内心を察するものの、何れ向き合わなければならない。天之御はそう自分に言い聞かせ、足を進めていく。

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