第451話 妖術と呪術

茨の道と知りながら敢えてその道に進んでいこうとする空弧の決意は周囲、特に星峰には痛い程理解出来た。記憶を共有しているという二次作用もあるにせよその気持ちは近い。


「私が当主となる事で呪いを断ち切り、両親や兄がばら撒いた災いの種を刈り取る事が出来るのなら、私は如何なる業も背負う覚悟です」


天之御の顔を見つめ、そう抱負を語る空弧、その顔に最早守られる者と言うか弱さはなかった。それを認めたのか天之御は


「分かった。空弧がそう決めたのなら僕はもう、何も言わない」


それだけを告げ、口を終える。だがそこで涙名が


「ところで空弧、さっき君は両親や兄達と言っていたけど……姉は含まれていないの?」


と話の本筋に全く関係の無いと思える問いかけを行う。それを聞き周囲の顔も空弧の決意を聞いた時とは違った驚きを見せる。恐らくこの状況でそれを聞く意味があるのか否かを問いたいのだろう。


「私に姉なんかいないわ。恐らくは三人目の兄が呪術で性を変えたのでしょう。私の血族に伝わる呪術は妖術の更に上を行く力と危険性を秘めた物。その位は造作もないのよ。恐らくは巫女の役割をやらせ、地位を回復するつもりだったのでしょうね」


空弧はそう解説する。だがその切って捨てる様な物言いは明らかに血族に対する嫌悪感に満ちていた。それを察したのか、涙名も


「そう、其れなら良いんだけど。何となく気になったから……」


と気まずそうな声を上げる。だがその直後


「ねえ、空弧……それに星峰、今の妖術の話で思い出したのだけど、昨日の戦いで星峰、明らかにこれまでより力が増してなかった?」


と岬が話を切り替える。その言葉を聞き、天之御も


「その点は僕も気になっていた。星峰、何か分かる?」


と言葉を続ける。だが星峰の返答は


「確かに力が増した様な気はしたのだけれど……どうしてそんな事が出来たのかは私にも分からない。只……」


と明言は避けているものの、心当たりはありそうなものだった。それを聞き逃さなかった天之御は


「只……どうしたの?」


と更なる問いかけをかける。すると星峰は


「空弧の兄に怨霊を注がれた時と空弧の父の喉元を切って音量を外部に出現させた時、当初は気持ち悪かったのだけど直ぐにそれが無くなったの。

まるで浄化されたかの様に」


と続ける。その言葉を聞き、涙名が


「浄化されたって……この前の先史遺産での大型兵器との戦いの時もそんな事を言ってなかった?」


そう続けると星峰は


「ええ、あの時と似ていたわ。怨霊を浄化し、その力だけを取り出している。感覚的にはあの時より明言出来るわ」


と話し、前回よりは具体性に迫ったものである事を告げる。

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