第452話 絡み合う生死の思念
「空弧の父親への攻撃はその能力を考慮しての事だとは思うけど、少なくとも空弧の兄に対してはその力は狙って発動させた訳ではないよね。あの威力の衝撃波から考えると」
天之御のその指摘に星峰は黙って頷く。実際、あの衝撃波の威力は自身の想定を遥かに上回っていた。下手をすればあの時点で部屋が崩れ、自分自身までも生き埋めになっていたかもしれないのだ。
「前回の先史遺産の時と言い、星峰には怨霊を浄化する力があるという事なの?でもそうだとするなら空弧にもその力が、少なくとも備わっては居る筈……にも関わらず何故星峰だけが発現して空弧が発現しないんだろう?」
内心の疑念が膨らむ天之御だが、敢えてそれを口にはしなかった。只でさえ重圧がかかっている空弧にこれ以上の重圧をかけたくなかったからだ。
「怨霊を吸収し力にするだけなら今回の父の事案でも分かる様に呪術で可能です。ですがそれを浄化し、力だけを得ているとなるともう私達の想定を超える何かが作用しているとしか……」
そう言いかけて空弧は言葉を止める。その言葉が真っ当な議論を成り立たせなくしてしまうマジックワードなのは承知していたからだ。
「つまり、今の僕達には情報が足りなさすぎるって事か……」
涙名はそう言って納得した顔を見せつつもその視線は星峰に向いていた。否、正確に言えば星峯本人ではない、星峰が手にしている剣の宝石に向けられていた。以前より輝きを増しているように見えたからだ。
「星峰のこの能力については追々調べていくしかない。だから今はそれよりも今出来る事をしようと思う」
「その言葉には賛成だけど、具体的にはどうするの?」
天之御がそう語ると星峰は言葉を続ける。それを予測していたのか
「まずは三度になるけど巨大地下都市の調査を行おうと思う」
と言う天之御の返答は非常にスムーズな物であった。
「成程ね……高度先史文明の事を調べていけば星峰の能力の謎も解けるかもしれない、そういう事ですね」
岬が納得した表情を浮かべると天之御は微笑ましい顔を浮かべ、その顔にその場にいた全員が少し和やかな気持ちになる。その笑顔に屈託がないからだろうか。
そこに星峰が
「なら、私の方からも一つ報告しておくわね。昨日の襲撃は既に人族部隊が知る所になっているけど、その襲撃についてコンスタリオ小隊が少なからず疑問を抱いてくれているみたい」
と良いか悪いかはまだ分からない物の、事実として起こった事を報告する。
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