第443話 眠れぬ魂

その大きさは伊達ではないらしく、一振りで地面を抉り、凄まじい傷跡を残す。更にその衝撃は周囲に立っている一同の体を揺るがす。


「空弧、一体何が起こったの!?これは……」


状況を把握する為か、岬が空弧に問いかける。すると空弧は


「奴はこの場に満ちている怨霊を吸収し、その力を使って変貌したのよ!!」


と起こった事実を告げる。それを聞いて涙名は


「成程、つまりさっきのは家族を無理矢理殺して吸収したって訳だ。だから苦しみ、狼狽えていた」


と納得した表情を浮かべる。だがそれは決して穏やかな表情ではなく、寧ろ怒りを内側に秘めている、そんな表情だった。


「だから吸収ではないと言っているだろう!!」


空弧の父はそういうと九本の尻尾の先端から無数の槍を放ってくる。涙名はそれを避けようとするものの余りにも多すぎる槍の数に対応出来ず、数本を足に受けてしまう。


「涙名君!!」


空弧がそう叫び、近づくと涙名はその場にしゃがみ込む。


「くっ、何だ此れ……力が……」


槍に何かが仕込まれていたのか、しゃがみ込んだ涙名はそれを抜く事が出来ない。それを見て空弧は


「待っていて、直ぐに対処してあげるから!!弧妖術……白銀の癒し」


と言って槍が刺さった部分を白い膜で包み、その体の傷を癒していく。


「その力……どうやらそれが今のお前の姿の用だな、空弧!!」

「そうよ!!そしてこの力で今日、お前を討つ!!」


父の言葉から傲慢さ、そして怒りを感じ取ったのか、空弧も負けじとその語気を強め、父に真っ向から反論する。だが空弧の父は


「ふん、一族の面汚しが。能力を扱えんだけでなく我等にその爪を向けてくるとはな!!」


と引き続き傲慢な言動を崩さない。


「能力を扱えないって、どういう事だよ!!」


八咫がそう反論すると空弧の父は


「先程お前達も見ただろう、私が今この姿になる為に何をしたのかを。その力を使いこなせるのが我が一族だというのにその小娘はその力を何時まで経っても発揮しなかった。其ればかりかこうして我等の邪魔をする。だから面汚しなのだ」


と得意げに空弧を見下すような発言をし、三度その爪を振り下ろしてくる。だが今回は空弧がその前に立ち、剣を構えてその爪を受け止める。


「ほう……この爪を受け止めるか。だが初戦借り物の体、お前本来の体でない以上……」


空弧を尚も見下し続けるその父だがそこに涙名が銃を取り出し、その体目掛けて数発発砲する。


「ぬうっ!!貴様……」


不意を突かれた故か、空弧の父の口調には怒りが混ざる。だがそれは涙名の表情も同様であった。

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