第435話 愚痴から始まる……のか?
「了解!!引き続き捜索を続けます」
捜索部隊隊長はそう告げると通信を切り、更に森の中へと入っていく。一方、その通信を切った基地司令は
「星峯さんの通信機が落ちていたという事は意識を失った星峯さんを何者かが連れ去ったという事ですよね……でも一体何の為に」
と疑念の声を上げる。するとそれに対して
「その目的も、そして何者がそれをやったのかも、私には見当がついているわ。そして、もしそれが当たっているとしたら急がないと星峰が危ない!!」
と空弧が大声を張り上げる。最初は静かだったその声が徐々に大きくなるそのしゃべり方は事の重大さを物語っている様だ。
「空弧……貴方がそこまで言うという事はつまり……」
岬が恐る恐る問いかけると空弧は
「ええ、こんな事を目論むのは奴等しかいないわ。そして、それによって得をするのもね」
と強い口調で続ける。
「だとしたら、その目的は……天之御殿下、此方も被疑者確保に向けて動きます」
基地司令が通信ごしにそう告げると天之御は
「頼んだよ。星峰に手を出している所は必ず押さえるから!!」
と返答し通信を切る。そして二組はそれぞれ動き出すのであった。
一方その頃、西大陸、例の拠点では
「八米街に制圧部隊を送り込んだ?こちら側が?」
通信機越しにそう疑問の声を上げるコンスタリオ、同じくその画面を覗き、首をかしげているシレットとモイスの姿があった。その通信相手は人族の女性である事は確認出来た。
「ええ、それもやけに大規模な部隊を編成してね」
そう告げる女性隊員の顔には呆れが浮かんでいる。その口調からコンスタリオ小隊と親しい関係にある女性の様だ。
「一体何でそんな無茶な事を……八米街はもうずっと昔から魔人族の支配下にある街。確かに規模が大きく、制圧出来れば大きな打撃を与えられるでしょうけど……」
「結局は返り討ちにされた訳だろ。しかもその影響で周辺の街の防衛戦力も低下する。全く、何を考えているんだかな」
シレットとモイスも口々に呆れている事を口に出して表明する。それは口にこそ出してはいない物の、コンスタリオも同様であった。
「私達の耳にも入って来たのは完全に事後報告よ。それに、本来は他言無用と言う事らしいけど、どうしても気になったのよね。この不自然な制圧作戦」
如何やらその女性は作戦への不満を口にする為にコンスタリオに通信を繋いだ様だ。そしてその口調が何を意味しているのか、コンスタリオ小隊は直ちに察する事は出来た。
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