第427話 もう一つの視点から

その一文を見た星峰は一瞬困惑した表情を浮かべるものの、直ぐに元に、否、その表情に屈託の無い笑顔を浮かべて返答を入力し送信する。それを終えると


「シレットの過去か……そういえば私も聞いた事は無かったわね。この文章によると過去に二度魔神族の襲撃を受けている。場所は……」


と呟いた後、手元の端末でその場所についての情報を収集し始める。するとヒットする案件があったのか星峰の顔が驚いた物になる。そして星峰は直ぐに走り出し、そのまま何処かへと向かう。

星峰が向かった先は天之御の自室であった。扉を叩き


「誰?」

「私よ。天之御、聞きたい事があるの」

「星峰?分かった、入ってきて」


とやり取りを交わした後星峰が中に入るとそこには涙名も居た。


「涙名も居たのね、これは好都合だわ」

「好都合って……何かあったの?」


涙名が訪ねると星峰は首を縦に振って頷き、涙名と天之御に先程コンスタリオから届いた連絡文の事を説明する。それを聞いた涙名は


「シレットが嘗て住んでいた街か……その名前は?」


と星峰に尋ねる。そして星峰が


「名前は確か……北見街って書いてあったわ」


と返答すると天之御が困惑した表情を浮かべる。


「えっ!?確かそこって……」


その言葉の音程は今の顔と完全に一致していた。天之御が困惑していたのは明らかであった。


「その街は確か北の大陸にある街だよね。でも北の大陸は戦争開始早々に魔神族が大半を制圧下に置いてある。その状況で人族の子供を産み育てる事なんて……」


涙名はそう疑問を口にするが、天之御は


「否、可能だよ。そこは僕達側の街であり、ある程度人族も共生していたからね」


と真剣な表情を浮かべる。


「天之御がそういうって事は、その街は反ブント側の街だって事だね。そしてその状況から推測すると、恐らく襲撃してきたのは……」


涙名の推論に対し天之御は


「うん、ブントと考えてまず間違いないと思う。その後街はブント側の魔神族によって制圧されていたけど、その数年後に人族部隊が再び奪い返したんだ。正確に言えば元の住人である魔神族の協力もあったけどね」


と明確な回答を返す。その言葉に嘘は感じられない。否、そもそも天之御は味方に嘘をつける様な性格では無い事は既に星峰や涙名も分かっていた。


「最初の襲撃はそこがブントにとって邪魔だったからと言ったところね。でもシレットの境遇はそれだけじゃない。引き取られた八女街も同じように襲撃を受けたの。しかも今度は街ごと失われる程の……ね」


天之御の言葉に納得したのか、星峰はそう続ける。その内容に涙名や天之御も驚嘆せずにはいられなかった。

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