第418話 街じゃない街

「どうかしたんですか?」


コンスタリオの声から只事ではない気配を感じ、モイスは思わず普段は言わない敬語になってコンスタリオに話しかける。するとコンスタリオは黙って前に表示されている画面に人差し指を向ける。他の面々がそれに釣られる形で前の画面に目をやるとそれぞれ程度は違えどコンスタリオと同様に驚愕の表情を浮かべる。

そこには人為的に人族や魔神族を生み出す技術とそれによって生み出された人族、魔神族の個別データ、更にはその養成方法や戦闘能力等が記載されていた。


「このカプセル……さっきの部屋に在った奴だよな……」

「ええ……でも、これってつまり、あの血はまさか……」


人為的に生み出された存在が培養されていたと思われるカプセルの写真を見たモイスはそれが先程の部屋のカプセルであると直感し、そこからシレットは嫌な予感を張り巡らせる。


「人族と魔神族の両方を生み出す技術……でもどうして両方を生み出す必要が?単に兵士として養成するのならどちらかだけで済む筈なのに」


アンナースがそう告げるとコンスタリオは


「確かにその点は少し引っ掛かりはしますね。考えられるのは諜報員を育成するという目的があるケースですが……」


と返答するものの、コンスタリオにはそれ以上に引っかかる事があった。それは今のアンナースの口調が比較的冷静に聞こえた事だ。こうした事に動じないと言ってしまえばそれまでだが、コンスタリオの脳裏にはどうしてもそうは思えなかった。


「この施設で生み出して育成して、一体何をしようって言うんだ?やっぱり体調の行った通り、諜報員でも育成してんのか?」

「でも、そうだとするなら戦闘技術だけでは不完全な筈よ。それ以外の面も……」


モイスが投げかけた疑問に返答する形でシレットも自身の疑問を投げかけるがコンスタリオはそこに割って入る形で


「いいえ、シレットの考えている部分はデータ内で改善されているわ。単に兵士として用いるだけでなく、民間としての生育も行い、それ以外の生き方も出来る様になっている。如何やら完全な兵士育成機関と言う訳では無いみたいね」


と答える。


「民間としての生育?ですがこの施設にそんな場所は……じゃあ、外の街でそれを行っていたのでしょうか?」


シレットは尚も疑問を続けるが、コンスタリオはそれに対し


「外で行っていたというのは正しいけど、あそこも正確に言えば街じゃないの」


と返答するがその返答はどこか意味深な響きがあった。当然


「街じゃないって、どういうことです?」


と言う返答が返って来る。

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