第378話 黒歴史の在処
「先史遺産の全盛期における戦争……となるとここで作られている兵器は元々その戦争に投入される為の物と考えてまず間違いない。そしてそれが人の形をしているのは……」
「兵士としての役割を取って代わらせる為だと思う。非人道的かもしれないけど長期的に見ればその方が人的消耗は抑えられるから」
涙名と天之御が声を揃えてそう語る。単に状況から推測したというだけではない、どちらも他者の上に立つ立場であり、その立場から見るが故にそう見えているのだ。
「つまり、従来人がやっていた部分を機械にやらせる……いえ、ここまでは今の世界でも行われている事ですが、戦場における殺し合いもそうしようとしたという事ですか?」
空弧がそう尋ねると天之御は
「そう。人の形をした兵器であれば柔軟な行動、対応、状況に応じた機器の使用等、戦車等とは違ったそういう運用も可能になる。
一方兵器でもあるのだから訓練や教育は不要、且つ自分に疑問を抱く事も無く代替も効く。いいとこどりとして考えるならこういう事になるね」
と明確な返答を返す。そこに八咫が
「だがよ、それって上手くいきすぎじゃねえか?例え最終的には……」
と異を唱えかけるがそこに星峰が
「八咫の言う通り、最終的には上手くいったみたいだけどそこに至るまでの黒歴史は今も尚残ってるみたいよ」
と語り掛ける。その目線の先にはこの部屋に設置されていた機械端末の画面があった。
「どういう事なんです?黒歴史って……」
岬がそう言って画面を覗き込む。すると星峰はその画面のとある部分を指差し
「見て、この端末からはこの建物のデータベースにある程度アクセス出来たの。だからアクセスしてみたんだけど、ここに注目して欲しいの」
と一同の視線をその先に向けさせる。するとそこにはこの施設のMAPが映し出されており、星峰の指の先には廃棄処理場と書かれた大きな部屋が示されていた。
「廃棄処理……つまりここに至るまでの失敗作が廃棄されているって事?」
空弧がそう問いかけると星峰は
「そこまでは断定出来ないわね。単に見られたくない物があるのかもしれないし。けど、ここに向かうにはかなり厳重な壁が幾つも設置されてる。只の処理場だとは思えないわ」
と回答する。
「だとすると、勢いで突っ込むのは危険だね……最悪は先日のオアシス下のような大型兵器が出て来るかも知れない。今日の調査では立ち入らないでおこう」
天之御のその発言は単に弱気とも取れるが、言葉の奥には明らかに警戒心が感じられた。それ故に他の面々もその場は黙って頷く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます