第377話 隠された生活空間
「原材料か……もしそれらすらも作り出すだけの存在がこの施設の背後に居るのだとすれば、それは僕達に取ってとてつもない脅威になるね」
涙名の疑問に対し天之御がそう返答するとその場に居た全員の顔が、否、空気が変わる。その様子は重苦しいというレベルの物ではなく、より大きな脅威が目の前に迫っている、そう感じる様な物であった。同時にその顔はその対象に心当たりがある、そう思わせる部分も見える。今ここに居る全員にとって他人事ではないのだろう。
「駄目ね……ここの機器からもデータベースにはアクセス出来ないわ。どうやら余程他の場所からアクセスされたくない様ね」
星峰のその一言で重苦しかったその場の空気はとりあえず元には戻る。だが同時にそれはここでこれ以上新たな情報が得られそうにない事も意味していた。仕方なく一同が入ってきた扉から戻ろうとしたその時
「……待って、これ……」
と星峰が何かに気付く。星峰の声に立ち止まった一同が彼女の方を見ると星峰は壁の一部に注目していた。
「その壁がどうかしたの?」
岬がそう尋ねると星峰は
「ええ、見ていて……」
そう言って壁の一部を叩く。するとその壁が動き出し、その奥に隠し部屋があった。
「隠し部屋?でもどうしてこんな所に隠す物が……」
一見すると何一つ隠す物がないように見えたその部屋で隠し部屋があった、その事に困惑したのか涙名がそう口にする。すると星峰は
「兎に角調べてみましょう」
と言い、考えるのは後にしてまず調べる事を提言し、他の面々もそれを了承する。そのまま隠し部屋へと足の向かう先を変え、一同がその奥に入って行くとそこには先程の部屋で調達したと思われる生活用品で溢れていた。
「この部屋の雰囲気……やっぱり誰かが生活していた形跡があるわね。でも一体誰が?それになんでそれを態々隠す必要があるの?」
部屋に入るなり空弧が口にした疑問、それはその場に居た全員が感じていた事であった。それに対し星峰は
「……もしかしたら襲撃を受けた際にここに避難する事を想定しているのかもしれないわね」
と、現時点での仮説を口にする。
「つまりここは元々軍事施設として作られたって事か……となると、ブントが建設した施設って線はかなり薄くなるな。今更だけどよ」
八咫がそう呟くと天之御も
「うん。軍事施設なのに生活環境も整えられているという事はこの施設が長期戦にも耐えられる拠点として作られたとしか考えられない。だとすると先史遺産の世界で戦争が起きていたという仮説とも一致するよ」
と続け、これまでの先史遺産における仮説を更に強めるのであった。
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