第274話 それぞれの内心で
「そんな事があるなんて……やはり先史遺産は恐ろしい物なのね……」
岬の一件を踏まえた発言と言う事もあり、星峰は霊諍のそれが虚言であるとは思わなかった。同時に先史遺産が恐ろしい物であるという事も又改めて心に刻み込む。天之御と行動を共にし、先史遺産についてもある程度分かってきたつもりになって来ていたが、ここにきて改めて自分が無知である事を自覚せざるを得なくなる。
「ええ、残念ながらその浸食を受けたものを正気に戻せたと言う記録は存在していません。従って万が一侵食されてしまったら……」
「限りなく低い元に戻す方法を探すか、或いはもう安らかに眠らせてあげるか……苦渋の選択ですね。戦場では日常茶飯事かもしれませんが、それでも認めたくないですね……」
霊諍の告げた残酷な事実に空弧は複雑な表情を浮かべる。それを見た星峰は
「空弧……」
と呟きながら空弧の顔を見つめる。それに気づいたのか、空弧も星峰の顔を見つめ、大丈夫だからと言いたげな顔をし、目で返答するような素振りを見せる。だが星峰の心配は単に今の発言だけではなかった。
「何なのかしら……はっきりしないけど、作戦中から空弧に妙な引っ掛かりを感じる。いえ、疑う訳じゃないけど……」
自分の中にあるざわつきにはっきりした答えが出せない、それが分かってしまうからこそ声にでる。そんな自分に戸惑う星峰だがそれを表面には出さない。
「万が一コンスタリオ小隊が侵食されたりしたらこの上ない脅威となる可能性も否定出来ない。今後は、少なくとも西大陸とここについては人族部隊よりも先史遺産についての問題を優先した方がいいかもしれないね」
涙名がそう語ると他の面々も一斉に頷き、天之御も例外では無かった。
「僕達は戻って今後の対策を考えるよ。又何か分かったら連絡してほしい」
天之御はそう伝えると転移妖術でブエルスへと戻り、そのまま各自休息を取る様に告げて解散させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます