第160話 争い合う同族

「どうしたの涙名?そんなに声を張り上げるなんて」


涙名の声に違和感を感じた星峰が問いかける。すると涙名は


「やっぱり星峰には気付かれるね。でも事態は厄介な方に転がっているよ」


と何か厄介な方に事態が転がっている事を告げる。


「どういう事なの?今の声を張り上げるって……それに厄介な方って?」


岬は会話についていけないのか思わず疑問を口にする、最も、星峰が涙名の違和感に気付いたのはずっと傍に、近くに居た存在であるが故なので気付かなくても無理はないのだが。そしてそれは八咫や空弧も同様であった、唯一気付いていたのか天之御は


「双方が競合関係にあるから……だよね」


と涙名の言葉に続く発言をする。その発言に対し


「うん。東の大陸と西の大陸の人族は昔からずっと張り合っていて戦争中でもどちらがより多く魔神族を討伐するか、より多くのエリアを維持しているか、兵士や兵器が優れているか、その他快挙に暇がないレベルで競合しているんだ。

そしてその煽りを受けるのは当然」

「民間人や魔神族って訳ね」


涙名が説明すると話を理解出来たのか岬もその後の言葉を続ける。そして


「戦争中でさえそんな馬鹿な事が出来るっていうのか、そんな水と油でもブントが居ると混ざるんだな」


と八咫が皮肉った発言をする。だが涙名は


「いや、この対立ももしかしたらブントが煽っているのかもしれない」


と八咫の皮肉の更に上を行く回答を返す。その回答に八咫は


「ブントが人族同士の競合を煽っている?」


と驚きを隠せない。八咫にとって人族は少なくともブントの手によっては纏まっていると思っていたからだ。だが涙名はそれを否定し


「うん、両者の優劣はどちらかがリードしてもすぐもう一方が追い付いてる。もしブントが技術を横流しして両方を等しくしているのだとしたらそれも納得がいくよ。そしてその目的は競合による技術の強化という仮説も立つ」


と持論を述べる。それを聞いた天之御は


「それなら尚の事放置は出来ないね。近々偵察を考えておくよ。それと、現地の魔神族に連絡して警戒も強めてもらうようにする」


とこの事態が放置出来る事ではないと考え、その対策を討つ事を決める。だがその直後、ブエルスの城内部に警報が鳴り始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る