第147話 機械の首都 ワンカーポ

「まあ、平穏無事に来れるに越した事はねえか」


自分から話しておきながら笑って話しを終えるモイス、そんなモイスにシレットも苦笑しつつも首を縦に振り、その場の空気は少々和やかになる。だがコンスタリオは


「確かに……小型機とはいえこれだけ堂々と飛行していたのに魔神族は何の妨害も仕掛けてこなかった。この近辺は人族エリアが多い事を警戒しているの?それとも、祖そもそも妨害を仕掛ける必要がなかった……だとしたらスターの情報も」


と順調すぎる旅路に逆に不安を覚えていた。

ワンカーポの入り口に着くとコンスタリオ小隊は


「貴方方は?失礼ですが確認をさせて頂きます」


と呼び止められる。呼び止めたのは厳重な甲冑を纏った人族だった。身なりからして首都の門番であることは想像に難くない。


「私達はキャベルより来たコンスタリオ小隊。私が隊長のコンスタリオです。イェニーという方から招かれているのですが」


コンスタリオがイェニーの名前を出すとその人族は


「イェニー隊長が?……分かりました、どうぞお通り下さい」


と告げ、門を開けてコンスタリオ小隊を中に入れる。そのままワンカーポの中に入っていくとそこにはブエルスともキャベルとも違う、機械的で工業地帯と言え建物で構成された光景が広がっていた。


「これは……すげーな!!」


様々な意味で初めて見る光景に驚きの声を上げるモイス、中の至る所にあるベルトコンベアやそれで輸送される日常品の数々、そこはある意味労働者という存在が不要なのではないかと思える程機械で作られていた。


「そうね、確かに凄いわ。でも……」


モイスに同意するシレットだがその言葉は何処かで詰まっていた。それに続く様にモイスも


「ああ、一瞬喜んじまったが、何か……暗いというか、寒々しいというか、そういう雰囲気もあるな」


と先程の驚きから現実に戻った様に顔を変える。彼らがそう思ったのは所々に見える人々の姿を見た為であった。商業的な言葉、挨拶すら交わさず、ただ無口で通り過ぎていくだけの人々、それは他の首都、いや町と比べても明らかに異質そのものであった。

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