第141話 星峰の慈愛

「星峰?一体どうしたの」


訪ねてきた星峰に空弧は不思議そうな声を向ける。その位この来訪は意外だったのだ。


「空弧、貴方……ブントに対して何かを抱えてるんじゃないの?」


そんな不思議そうな問いかけには答えず、星峰は率直に地震の意見を口にする。それもストレートな表現だった。だが空弧は


「……貴方なら分かるんじゃない?」


と何処かはぐらかしたような回答をする。それもその筈である。入れ替えの妖術の効力jにより星峰は空弧の記憶も持っており、そこを探れば自身の疑問は解決出来る筈なのだ。にも関わらず敢えて訪ねて来ている、空弧にとってみればそれは不可思議以外の何でもなかった。


「確かに、やろうと思えばやれない事は無いわ。でも私は、それでもあなたの口から聞かせてほしいの。勿論無理にとは言わない」

「その様子だと、私の記憶を調べてはいないみたいね。その点に関しては感謝するわ」


今の発言から星峰が自身の記憶を詮索していない事を察する空弧、だがそれは今の彼女にとって救いとなった。空弧自信が気付いているのかどうかは定かではないが、その言葉を聞いたとき空弧はふと安心した笑みを浮かべていたのだ。その事に気付いた星峰だったが、敢えて気付かないふりをして話を続けた。


「……御免なさい、今はまだ……」


そう言いかけて言葉を詰まらせる空弧、その様子から星峰は彼女が何かを抱えているのを察するのに時間はかからなかった。そんな空弧を見て


「分かったわ。話したくなったら又話して。そして、私は何時でも貴方の力になる」


星峰はそれだけを告げると扉を開け、部屋から出る。その言葉を聞いた空弧は


「力になる……か。本来であれば私があなたにかけてもらえる言葉じゃないのに……星峰」


と嬉しそうな反面、何処か罪悪感も感じさせる表情を浮かべる。やはり身体入れ替え妖術を使った事が尾を引いているのだろうか?


「でも、その言葉に応える為にも、私は!!」


その罪悪感を払拭するかのように語気を強めてそう言い放つ空弧、その抱えている物とは一体何なのだろうか?それはこの先何をもたらすのだろうか?

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