第142話 問いかけ合う面々

一方、空弧の部屋を出た星峰は自室に戻ろうと足を進める。そして自室の前に来るとそこには岬と八咫が居た。双方とも一見すると何時も通りの顔をしている。だが星峰は直感していた、二人は何か言いたい事があるのだと。


「あら?何してるのここで」


直感が導いたのか、星峰は自分から二人に話しかける。すると岬は


「星峰、貴方……空弧に会ってきたの?」


と問いかける。ついさっきまで正にそうしていた星峰は


「ええ、さっきの空弧の様子は明らかに妙だったから」


と誤魔化す事無く返答する。その返答を聞いた八咫は


「その理由、聞いたのか」


と続けて質問してくる。その言葉は何時ものトーンの様で何時もではないそんな複雑さを感じさせる物であった。そのトーンに何かを感じたのか、ここでも星峰は


「聞いた事は聞いたわ。でも、答えては貰わなかった、無理やり聞いちゃいけない気がしたから」


と先程あった事をそのままに話す。それを聞いた二人は


「そう、良かったわ」


とどこか安心し、胸を撫で下ろす。それを見た星峰は


「その様子だと貴方達は知っているみたいね、空弧の暗部を」


と先程とは逆に問いかける。それを聞いた二人はハッとした表情を一瞬浮かべ


「……ああ」「ええ」


と声を揃えて頷く。その声は先程までとは明らかに違い、何処か張りが無い。声の調子で二人の心境を察したのか、星峰は


「安心して、貴方達から聞き出そうって気はないから。空弧は何時かきっと話してくれる、根拠はないけどそんな気がするの。分かったら部屋に入れてくれる?」


と二人に声をかける。その言葉を聞いた二人はそっと星峰の部屋の前から移動し、自分の部屋へと向かおうとする。だがその直前岬は


「空弧の気持ちを汲んでくれてありがとう。だからこれだけは言っておくね。空弧のブントを許せない気持ちは誰よりも、天之御様よりも強いの」


と星峰に告げる。その言葉をしっかりと耳に入れた星峰は


「分かったわ」


とだけ返事をし、部屋の中に入る。そして何時も通りシャワーを浴びるがその際に鏡を見て


「空弧……この体に何が刻まれたというの?」


とぽつりと呟く。

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