第136話 非情なる戦場

その直後、処罰の伝言を伝えに行ったはずの豊雲が慌てて戻ってくる。激しく息を切らしており、何か起こったのは明白であった。


「どうしたの?何があったの?」


岬がそう尋ねると豊雲は


「処罰の伝言を伝えたのですが、その直後に…」


息が切れている状態で必死に返答しようとする。それ故か言葉が途切れてしまう。それでも辛うじて声を出し


「人族部隊が瀬海町に向かって進撃していると…いえ、既に射程圏内に捉えているという情報が…」


と息を切らして伝えたかった内容を告げる。それを聞いた瞬間、その場に居た全員の顔色が変わる。


「瀬海町って確か、西の首都ワンカーポから一番近い港町よね、そしてスリーリバーマウンテンからもかなり近い…だとするとさっきの部隊は!!」

「キャルムからの援軍が来なければそっちの前線に投入するのが狙いだったのか!!」


星峰と天之御が続けて叫ぶと


「しかも既に射程内に捉えている…例の迷彩機能を使ったんだろうね」


と涙名が続ける。


「恐らくこうしている間にも攻撃が…」


豊雲が言葉を絞り出すと天之御は


「分かった!!直ぐに迎撃に向かうよ!!豊雲が、君はここで戦況を確認し、場合によっては援軍を手配して!!」


と告げ、その命をうけた豊雲は


「りょ、了解…」


と息を切らせながらも返答する。その直後、天之御達は急いで転移妖術を使い、瀬海町へと移動する。そして現地に到着し、周囲を見渡すと同時に爆発音が聞こえ、それに驚いて周囲を見渡すと町の一部は崩れ、人族魔神族を問わず負傷者も出ていた。


「酷い…種族を問わず負傷者が…」


涙名が悲し気な声でそういう。


「ここは人族と魔神族が共生している町だからね…そして」

「これが奴等の…ブントのやり口なの…」


そう語る空弧と星峰の顔と声には静かではあるが確実に怒りが混ざっていた。

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