第115話 微かな光明 その先は
兵士長は
「そ、そんな筈は・・・我々に送られてきた通信は・・・」
と同様した顔を隠せずにいながら手元に通信文章を出し、その文章とシレットが持っている文章を比較する。その内容は一言一句同じであった。魔神族が侵攻の準備をしている事、その標的、部隊構成、進路、ただ一つ、文末にスター・ボレートの名前があること以外は。
「スターの名前・・・と言う事はつまり、この匿名通信の発信者は・・・」
「少なくとも私に対してはスターが送ってきた可能性が高いと思います。モイスたちの方にはブエルスの一件から敢えて名前を伏せたのではないでしょうか?」
コンスタリオがそう話を切り出すとシレットは現時点での自分の考えを告げる。その考えには少なくとも一定の説得力があり、コンスタリオやモイスだけでなく兵士長も頷く。
「兎に角、話は戻ってからにするとしよう。今はこうして再会出来た事を喜ばせてもらおう」
兵士長のその一言でその場での会話は打ち止めとなり、コンスタリオ達は移動車でキャベルへと引き返す。キャベルに帰還するとコンスタリオ小隊と兵士長のみがミーティングルームに入り、そこでシレットにこの一週間の事が伝えられる。
「成程、此方では特に動きはなかったという事ですね」
椅子に座りながら納得した様子を見せるシレット。当然次はコンスタリオから
「それでシレット、貴方はどうやってここに?」
と言う質問が入る。その時のシレットの顔はやはりと言った表情だった。
「スリーリバーマウンテンの戦いで意識を失ってしまった私は奴等の居城と思われる城の牢に幽閉されていました。当然逃げられない様に足を繋がれて。消耗していた私はそのまま絶望の淵に立たされていたのですが、暫く経って廊下から会話が聞こえてきたのです」
「会話?」
「ええ、私は少しでも奴等の情報を掴もうと手元にあった録音端末にそれをろくおんしたのですが、その内容がこれです」
モイスの質問を差し挿みつつシレットは端末の再生スイッチを押す。すると
「ねえ、ところでさ。この前空弧と入れ替わった人族の子、まだ見つからないの?」
「ええ、手を尽くして捜索してはいるんだけどね。このままだとこちらの状況も不利になりかねないし」
「確かスターって名前だったよね。既にこちらの情報が洩れている形跡も良く良くチェックしたらだけど見つかってるし、あまり長く野放しにして置くと後々あの作戦がこちらの首を絞めることになりかねないよ」
「・・・そうね、その為にも早く捜索しないと」
と言う会話が聞こえてくる。
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