第105話 怒りは人を狂わせる。

「サンダー・ダンス!!」


シレットはそう叫ぶと手から雷を乱射し空弧を狙う。しかしスターの記憶も持ち、シレットの技も当然記憶している空弧はそれを容易く回避し、そのままシレットの懐に接近する。だがそのまま剣を抜こうとしたその時、シレットが足に雷を纏い、空弧の肩を蹴り飛ばしつつ雷撃によるダメージも与える。


「つっ・・・最初の雷撃はフェイクね・・・」

「こんな手に引っかかるなんて、やはりあんたは体を奪っただけの紛い物ね。スターだったら決してこんな手にはかからないもの」


空弧に一撃を加えた為か、何処か蔑む様な口調のシレット。その発言を聞いた空弧は何処か複雑な表情を浮かべる。一方、涙名は兵士と交戦し、その素早い動きと急所を確実に捉える攻め技で次々と兵士を行動不能にしていく。


「ちっ、ええい・・・」


兵士は何とか銃を構え、涙名に対し乱射してくるが下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる程涙名の動きは甘くなかった。放たれた銃弾を全て正確にかわし、勢いをつけて接近しつつ


「黒秘儀、黒猫の爪針」


と言って兵士に爪を立ててダメージを与えていく。更にその兵士達は


「何!?くっ、体に力が・・・」


そう呟きながら膝を崩し、その場に倒れこんでいく。その光景をみた涙名は


「これが・・・この子の身に着けた生きる術か・・・魔神族の本隊ともっと早くに出会えていればこんな技術を覚えずに生きられたのに・・・」


と、この体の嘗ての主が身につけなければならなかった戦いの方法に思いをはせる。だがその様子は兵士達には


「ちっ、余裕をかましやがって」


と余裕を見せているように見えたらしく、攻撃はさらに激しくなる。


「涙名君!!」


その光景を見た空弧が思わず名前を呼ぶとその名前に反応したシレットが


「ルイナ!?その名前って・・・どうしてあんたたちの仲間にその名前がついているのよ!!私達を挑発しているの!!」


と更なる怒りを露にする。それを見ていた涙名は


「しまった・・・僕の名前は・・・」


その光景を見て涙名も空弧も今の呼びかけは不味かった事を悟る。だが時すでに遅く、シレットは頭上に巨大な雷撃の球を出現させる。


「あ、あれは!!」


その光景を見た涙名、空弧は驚愕する。なぜならそれは本来自爆覚悟で使うべき技であり、容易く仕える物ではなかったからだ。


「君は・・・自爆するつもりなの!?」


涙名がそう問いかける。


「あんた達を道連れに出来るのならね!!」


シレットは躊躇う事無くそう答える。そしてその間にも雷はどんどん大きくなっていき・・・

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