Chapter4【Last Battle】
Stage10_喰らう《clout》
「俺の“
幼くなったウィズの腕を掴んだ
ウィズにとっても初めての経験。
だが彼女は、宿主の“
エネルギーの消費を抑えて縮んだウィズは、
(――ッッ! これがお父様の“
摂取と同時にウィズが恍惚の表情を浮かべる。
これがウィズにとっては初めてとなる、親からの食事。敬愛を超えて盲信の対象となった
前貸しで六時間。
つまり戦いが終わってから六時間はスマートフォンの虜になるということを
だが、何より目を引くのはウィズの背中、そこに現れた三対のレイピア状の突起。
それは足下に降りるにしたがって短くなっていった。
ウィズが白翼を睨め付ける。
『ごちそうさまでした、お父様』
彼女の視線に晒されてなお、白いグラトンは微動だにしなかった。
その手をゆっくりとかざすと、後方の操られた人々を押さえていた
『我の目的はその女から同胞の眼を回収するだけであったのだがな……こう何度も面白いものを見せつけられては全て手に入れたくなってしまうではないか』
得体の知れない能力を見せつけられながらも、純は焦らなかった。
「アタエさん、
一度に発動できる
ウィズは手を差し向けると、
「平サン……悪いけどすぐに戦ってもらうと思う」
「いつもみたいにすればいいんでしょ」
「清水は治療が終わり次第サポートについてくれ」
それだけいうと
『――次は何を見せてくれる?』
「最初からなんも変わってねえんだ」
アプリを起動。
「こんな事にしたヤツをぶん殴って、これからもそんな事がないようにするって」
テロン♪【Training Mode】
「お前が全部の黒幕なんだろ? 分かりやすくて結構じゃねえか」
眼鏡をクイッと持ち上げ、スマートフォンの画面に指を添える。
「償えとは言わねえぞ、クソ野郎。時間は戻らん……!」
テロン♪【GAME START!!】
ギロリと睨め付けると、ウィズが躍り出る。
テロン♪【excellent!】
これまでとは初速が違った。
弾丸のように飛んでいくウィズ。背中の突起は
言うなればそれは
一番上の一対が白く光り、急な加速を実現させる。白翼まで十メートル、それを一秒すらかからずに詰めきった。
が、突如一面の青がウィズの視界を遮る。
真ん中の一対の翅が光るとウィズのスピードはゼロに向かい、一番下の翅が光ると上方に急旋回をした。
ウィズは得体の知れぬそれを嫌い、避けたのだ。
衝撃波が
人間の眼で追える速度ではない。
『笑止! 羽の生えたばかりのひよっこが我と競おうとはな』
上空。白翼もまた、あの一瞬の間に飛翔をしていた。
「……ウィズ、頼んだぞ」
『はい、お父様!』
テロン♪【excellent!】
再加速。
テロン♪【excellent!】 テロン♪【excellent!】 テロン♪【excellent!】
ウィズが白翼の龍人を追随する。
ザン、ザンッッ!!
幾度も背後、側面から刃を通そうとするが、回避、あるいは単色の薄い壁に阻まれる。先ほどは青、今度は赤、次は紫。白、黄、オレンジ、赤、黄、またオレンジ。
二体のグラトンは
「あれは……ペイント系のアプリか?」
テロン♪【excellent!】 テロン♪【excellent!】 テロン♪【excellent!】
「クソがッ、速すぎて見えねえ」
ウィズの眼からの映像を見てチラリと見て判断したが、アレはダメだ。
あまりのスピードに吐きそうになってしまった。
「アタエさん……!」
純が平の背を支えながら声をかける。ようやく彼女は回復したようだった。
「頼む、平サン。……ごめん」
「任せて」
眼を閉じ、深呼吸をすると平は敵を見据えた。
(ウィズ、こっちの
「清水、ついてこい」
平が五人の
「……人形に負けるわけにはいかないわね」
平は一番手前の男の襟と袖を取ると、流れるような所作で投げ飛ばした。
◇ ◆ ◇ ◆
超音速で描かれるエメラルドグリーンの髪の線。ウィズは波打つそれを邪魔と切り捨ててつつ、追われているこの状況でヤツを誘導する方法を考えていた。
(この有利な場面でわざわざ地上に近づいてくれることを期待するのは困難……。しかしお父様がそれでもウィズに命じたという事は――)
どうしたって相手の方が速い。追われるウィズは上空へ加速する事にした。
一番下の翅、急旋回ッッ!
ウィズがコースを変えると白翼も急いで食らいつく。上方を取られたくないのはお互い様だ。だがウィズは突如生えた翅にもそろそろ慣れてきたころだった。それこそ進行方向を急に変えたり、地面すれすれでも飛べるくらいには。
(お父様、恐ろしいお人)
身を翻すと、下から追ってくる白翼。
『
ウィズが叫ぶと共に巨大な
五枚の
『――ッッ!?!?』
白翼のグラトンは上空からの急な衝撃を為す術もなく全身に喰らう。超音速により一枚目の
(また変な名前を付けるなと怒られてしまいますね)
微笑むウィズは明らかに新たな能力を手に入れた事で高揚していた。
『ッッオオオオオオオ!!!!!!』
白い龍人は振り向いた事でかろうじて
――そして衝突。
爆音が鼓膜をつんざき、暴風が髪を揺らした。
彼らの前に
全員が息を呑み、凍り付く時間。
「清水! 平サンの周りに雷のヤツ!!」
「弾け、雷封ッ!」
それは平の周囲で倒されている操られた人々に触れ、彼らが手にしていたスマートフォンを壊した。
「平サン、平気?」
「……びっくりするでしょうが」
「これでなんとかなればいいのですが……」
と、そこへウィズが降り立った。
「ウィズ、あんたその髪……」
乱雑なミドルヘアに変貌していた彼女に平は言葉を失う。
『あの愚物、起きますよ』
ウィズが平の言葉を遮って睨みつけた先、土煙の奥から白い龍人が姿を現した。
『はははははははは!!!! 我を地に落とすとはな!!』
俯いたまま豪快な笑い声を響かせた白いグラトンは、しかし激しく傷ついていた。翼はひしゃげ、四本ある腕のうち、後方の一対はぐちゃぐちゃに潰れている。
『非常に面白い! 面白さ
それでも、頭部、胴体、両脚、尻尾は無傷で、動ける事には変わらない。未だに油断はひと欠片もできない状況。
荘厳な口調で語る白き龍人が顔を上げると、
『――息の根を止めてやる』
そこには憤激の権化がいた。
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