高卒ネカフェ店員の俺がスマホ片手に異界転生したら神になれた件

@tutida

第1話 プロローグ

学歴社会ってヤツはマジで存在するらしい。


教育期間を終えて社会人という生命体が生まれるとするならば、学歴という先天的な出自によって、あるいみ生まれながらにして身分が定められている。

有名な大学を卒業しなければ就けない仕事があり、そもそも大学にすら通っていない人間にはひとに忌避されるような仕事が回される。

そういった出自による差別というのは、ある種の安定化剤として社会に添加されるべきだと黙認されているのだ。


高校生だったおれには、そういった社会の構造を知る術も、それを確かめる術もなく、ただ漫然と”おれが生まれる日”までの猶予を過ごしていた。

思えば教育期間というのは胎児にたいする母の愛情に近いものがある。

そういったイン・ヴィヴォな庇護がどれほど貴重なものだったか、胎児たちに説いて回りたいと思うのはおれなりの父性だろうか。


そうしておれは偏差値 38 の高等学校を卒業した。ほとんどの同級生は差別階級にカテゴライズされ、回されてきた仕事を淡々とこなす歯車に変貌した。

イン・ヴィヴォからイン・ヴィトロへ。この記念すべき誕生を祝う風習は、どうやらこの世界にはないらしい。

そのなかでおれはなんとなく、社会の部品になるならば、歯車ではなくエンジンだ、という思いを持っていた。

おそらくエンジンたるものの心構えなんてものもあるのだろうが、残念ながら俺のモチベーションは「歯車ではないなにか」にあったと思う。

だから歯車になることを拒否し、かといってエンジンになる訳でもなく、駅前のネットカフェでアルバイトを始めたのだ。


この話は高卒ネットカフェ店員のおれがエンジンになるまでのサクセスストーリー。

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