朝は来ず

 あれから三ヶ月が経った。

 ヒュドラの襲撃から多くの人が魔物に殺された。国王も死んだらしい。

 人は、着々とその最後へと向かっている。

 あの日、レフも世界も救えず、自棄になった私は聖剣を折った。聖剣は灰となり、風にさらわれて消えた。

 失意の底、家に帰った私を出迎えたのは、腹を空かせた鶏のけたたましい鳴き声だった。仕方がないから餌をやった。レフと一緒に育てた作物も枯らせるわけにはいかない。仕方がないから水をやった。そして、次の日になればお腹が空いていた。鶏も作物も私が面倒を見なければいけない。死ねないので、仕方がないからご飯を食べた。同じ理由で、仕方がないから眠った。

 そうして、いつの間にか三ヶ月が経っていた。

 聖剣のない今、人に希望はない。ただ魔物に犯され、死んでいく。きっと私も近々そうなるのだろう。

 明日に希望はない。未来に光はない。

 けれど、今なら分かる。

 そんなこと、今日を生きる私には、関係ないのだと。

 滅び、その末路は必定。それでも私は、ただ今日を生きていく。


fin.

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