日昇れども

 夜は明けて、朝日が差し込んだ。

 そして、それは殆どが瓦礫となり果てた街の惨状を照らす。多くの死体。流れた血が一面に広がり、街を覆いつくしている。


 そんな血溜まりの中に少女が一人。

 隣には八つ首の大蛇が真っ二つとなって、転がっている。


 呆然と空を見上げる彼女に、風が吹き付け、その金髪を優しく揺らす。

 彼女の足元に落ちているのは、黒い剣。何の輝きもなく、ただ血の中に沈んでいる。



「レフ、貴方のいない世界なんて、私には何の意味もないよ」


 そう呟くと、少女の瞳からは涙が一滴、零れた。

 頬を伝い、顎先にまで達し、雫を作って、彼女を離れた。陽光を反射してキラキラと輝きながら、落ちていく。

 そして、その涙は黒い剣にぶつかって弾ける。

 けれど、それだけでは無かった。

 黒い剣のほうにも皹が入っている。続く二滴目に皹は広がり、三滴目で遂にその剣は音も無く折れた。

 その折れた部分からその剣はサラサラと砂状に崩れ落ちていく。細かく、粒子となり果てる。まるで、灰のように。


 そこにまた風が吹いて、剣の灰を巻き上げる。空へと吸い込まれていくそれは、すぐに見えなくなった。

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