幸福と不幸は女神様次第!?

ほるほるん

第1話 不幸な人生 【表紙】【挿絵】

 「ツイてなかったね」

 学校帰りに友人と話をしていると、今までの人生で何度も言われた言葉が耳に入ってくる。

 「気にすんなよな」

 もう一人の友人にもフォローの言葉を言われる。


 自分では気にしていなかったが、俺はそう言われることが多い。

 正直、自分があまり気にしていないことを他人に指摘されるのはあまり快くは無い。でも…


 「ハハッ!別にこのくらい何でもねえよ!幸福と不幸ってのは釣り合うようになってんだからこの後の人生にハッピーが待ってんの!」

 と無駄にテンションを上げながら俺は怪我した左腕を振り上げ、何ともないことをアピールする。


 だが、俺はその場しのぎにこのセリフを言ったわけではない、俺は心の底からそう思っているし、プラス思考は良いことを引き寄せるという話をどこかで聞いたことが…


 ――ドンッ!

 自分の幸福論を語りながら歩いていた俺は路地から飛び出してきた男に気がつかず、派手にぶつかり、道路へ放り出された。後で思ったことだが、ぶつかった相手は泥棒か何かで逃げている途中だったんじゃないかな。「まぁ人にぶつかって怪我をするなんて俺にとっては日常茶飯事だな」なんて思っていたが今回は…


 ―――――

 ―――――

 ―――――

 俺の記憶はそこまでだった。というか今、俺はどうやって思考をしているんだ?恐らく状況を鑑みるに俺は道路に飛ばされたあとトラックか何かに…

 とても凄惨な状況になったであろう事故現場を想像してこれ以上想像するのはやめておいた。トラウマを残してしまった目撃者の方には申し訳ないことをしてしまったな。


 「で、ここはどこだよ」


 辺りを見回してみるが見覚えはない、いや、ゲームか何かでなら見たことがあるな、そうだ、異次元空間というやつじゃないだろうか…

 暗く広い空間に細かい光が点々としている。宇宙空間に似ているかもしれない。まぁ天体観測なんてしたことはないが。そして椅子?に誰かが腰掛けているな、気付いてはいたが話しかけたほうがいいのか?いや、でも…


挿絵(By みてみん)


 「――四宮渉、あなたは命を落としました。本来ならば死後の世界に送られるのが普通です。が、今回は特別な事情があり、こうして話をしています。」


 「はぁ…」


 なにを言ってるんだこの人は…。というか何で俺の名前を知ってるんだ?特別な理由ってなんだ?もしかして悪い意味か?死んだあとまでツイてないのかよ…


 ――ピクッ


 「ツイてない…?」


 銀色の前髪に隠れた青い瞳が少し細くなる。

 あっ、しまった。つい思っていたことが口に出ていたようだ。心証を悪くしてしまったかな…


 「あなたは今までの人生をツイてない…つまり不幸だと思っているのですか?」


 「まぁ確かに良くはないよな、子供の頃からずっと周りから言われてて…」


 正直に思ったことを答える。この人は何をしたいんだ?雑談しに来たってわけでもないだろうに…


 「…つまりあなたは『なんで自分はこんなに不幸なんだ!理不尽だ!女神様の怠慢だ!』と思っているということですね…?」


 「えっ、そこまでは…」


 「あなたは女神が嫌いで、もし目の前に不幸の元凶の女神が現れたら不満をぶち撒けてやろうと思っているんですね!」


 あー、この人。相手の話を聞かないタイプの人だ。どーしよ、これ…

 ため息を吐きながらどうやって落ち着かせようか考えてみる。


 「あのー、落ち着いて?まず、名前!そう、名前教えてよ」


 「…レアです」


 まるで何かを諦めたかのように名前を呟いた。さっきの取り乱し方といい、今の落ち込み方といい忙しい人だな…

 …人?


 「そういえばさっき女神がどうとか言ってたけど」


 ――ビクッ


 なんてあからさまな反応なんだ…嘘をつくのとか苦手なんだろうか

 でも、そうだよな。こんないかにも「異次元です」って感じの空間に普通の女の子が居るわけないよな。


 「で、女神の君が何の用で俺に個人的な話を?」


 「それは、その…」


 透き通るような青い瞳を逸らしながら、観念したように…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る