第4話 奈瑠の答えと生徒会

 家に到着すると小春は俺を押しのけ、玄関に飛び込む。


「たっだいま~」


 小春が先に家の中へ入って行く。


「小春、ここはお前のうちではないぞ。そこは、お邪魔しますだろ」

「いや、もうここは、わたしの第2の自宅ですよ。なんなら、わたしは、先輩の2人目の妹ですよ」


 言っていることが無茶苦茶だ。2人でリビングに入ると奈瑠がソファでくつろいでいた。


「こはる、お帰り。今日は早かったんだね。お兄ちゃん、いらっしゃい。来たんだね」

「お、おい、妹よ。その発言は、なんか間違っているぞ」


 奈瑠の陰湿な冗談を受け止め、鞄を下ろし椅子に座る。


 晩飯までは少し早いので先に生徒会での話を奈瑠に聞かせようと重い口を開こうとしたその時、


「先輩、あの話は、わたしからします。今から話すつもりだったんでしょ、顔に出てましたよ」


 小春が俺の口を手で押さえ、奈瑠には聞こえないように耳元でささやいた。


 奈瑠は少し不思議そうな顔をしてこっちを見ていた。


「奈瑠~最近、家ではどんな感じ?ゲーム?テレビ?1人で寂しくない?」


 小春が唐突も無い話を奈瑠に向かって始めた。


「小春、どうしたの?なんか、気持ち悪い」

「わたしは、いつも通りだよ~。で、どうなの?教えてよ~。奈瑠~」


 奈瑠がとてつもなく、うっとおしい物を見る目で小春を避けようとしている。


 しかし、小春は引くどころか、さらに押して行く。


「わ、わかったから、話すから、少し落ち着いてよ、こはる」


 奈瑠が観念すると、小春は、サッと身を引き椅子に座る。


「えっと、家でどんな感じかって話だよね。別に普通。お兄ちゃんが帰ってくるまでは、ゲームしたり、テレビ見たり、寝たりしてるだけだよ。寂しいって事はないかな?まぁ、お菓子無いと口が寂しいくらいかな」


 嫌々ではあるが奈瑠が話すと、小春はニヤニヤしながら頷いている。


 今の話から何か考えがあるのだろうか?奈瑠の内容からは、生徒会に入る要素は感じられなかった。


「じゃあ、奈瑠は家で暇って事だよね?」

「まぁそうなるね」


 んん!?小春はなにをするつもりだ?そう思った瞬間


「実はね、生徒会で話してたんだけど生徒会役員あと1人足りないんだよね。それで、会長や先生に奈瑠のこと話したら、もうそれは、大歓迎だって喜んじゃって、明日、これ書いて提出ね」

「えぇーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


 小春の行動に思わず声を荒げてしまった。小春の手には生徒会加入届が、いつの間に持ち出していたのやら。奈瑠は、思わずそれを手に取って読み始める。


「お兄ちゃん、これって強制?」


 ギロッと冷静で刺すような目で兄を見てくる奈瑠、妹の迫力に少し押されるも冷静を装い、話を始める。


「いや、別に強制ではない。でも小春の言っていたことは本当だ。生徒会のメンバーは、後1人募集しているし、奈瑠のことを会長に話したらとっても嬉しそうだった。たまたま、居合わせた先生も奈瑠なら全然OKだってお墨付きだ」


 事実を話すが奈瑠の表情はあまり変わらない。


「それだけ?お兄ちゃん何か隠してない?」


 さすが、我妹だ、本当の理由を隠していたのはばれていた様だ。


「隠してたって事ではないけど、昨日のお前を見て、家で1人にして置くのは兄として心配なんだ。奈瑠が1人でなにも出来ないと言うか何もしないのは分かってるから1人で帰るのも寂しいだろうと思ったし、生徒会に入れば俺も一緒にいるからさ。生徒会に入るって案は小春が言い出したことだけど、俺は、奈瑠が入ってくれるなら安心だし助かる」


 本当のことを話す。こんな俺の過保護みたいな申し入れを易々受けてくれないだろうなと思いうな垂れる。


「そっか、まぁめんどくさいし、家で寝てるほうがラク」


 そう来るとは思っていた。俺はもう、諦めモードに……


「でも、なんだかもう生徒会入るって話で進んでるみたいだし、今更、嫌でしたなんて私の印象悪くなるじゃん。それに、こはるもいるし、お兄ちゃんって言う使えるアイテムもあるし、入ってみようかな、生徒会」


 奈瑠は少し照れているのか頬を薄っすら赤めている。


「えっ!?本当に?」


 俺は、顔を上げ奈瑠を見て聞き返す。


「なに?入って欲しくないの?あんなシスコン丸出し発言しといて、小春もいるのに恥ずかしくないの?」


 後半の台詞は関係ないような……とにかく奈瑠が生徒会に入ってくれると言った、言ったんだよな?少し混乱している。まさか、奈瑠がOK出すなんて驚くしかない。


「い、いや、入ってくれて、ありがとう。とりあえず、一緒に頑張ろう!!」


 思わず感謝の言葉が出ていた。


「先輩、わたしにはそんなこと言ってくれなかったのに」


 少しむくれた小春。奈瑠の答えがこうなることを分かっていたのか、何も考えていなかったのかは分からないが、まぁきっかけは小春であることは、間違いない。


「はいはい、小春、ありがとな」


 小春の頭にポンと手を置いて感謝する。奈瑠は小春から受け取った申請書に名前を書いている。書き終わると、「ふぅ……」っと一息つきソファに寝転がった。


「お兄ちゃん、書いたから持って行ってね。それで私は、明日から生徒会に行くことになるの?」

「あぁ、明日の放課後から来てくれ、その時、正式に紹介するから。小春!明日、奈留を連れて来てくれよ」

「わっかりました~お任せください!!」


 会長たちどんな顔するかな?本当に入ってくると思っていたのか、あの状況での悪乗りだったのか?でも会長は表裏無いからな。


 まぁ、これで明日から奈瑠は正規の生徒会メンバーだ。


 この後、俺、小春、奈瑠で晩飯を食べ、小春と奈瑠は部屋に入っていった。


 俺は、片付けを終え、テレビをつけながらソファで1人コーヒーを淹れくつろぐ。


 正直、想像していなかった生徒会メンバーが、集まった。


 会長、未琴、俺、小春に奈瑠まで……これからの生徒会は、楽しみのようで少し不安もある。でも、このメンバーなら何とかなるだろう。明日の放課後には新生徒会が本格始動だ。俺は、これでも先輩なんだし、生徒会であいつらを見返してやろう!!


 そんなことを考えていたのが明日には無駄になるとは、俺は知るよしもなかった。

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