第413話 下邳の戦い
朝焼けの雲が天を流れている。
その遥か下の地にて、二軍が大地を揺るがして血みどろの争いを始めていた。
曹操軍寄手数十万は一斉に城に攻めかかった。
「登れや登れ!城内侵攻!城門開口だ!!」
城壁に梯子をかけ、兵たちが将たちの声に合わせて登り進む。
「そうはさせん!岩を転がし、登り来る兵を槍で突き殺せ!」
呂布は
『天下無双の呂布がいる。』
それだけで城兵の士気は上がり、彼らは城壁に迫る敵を次々と撃退していった。
しかし、・・・
「今日の曹操軍は異常だぞ。・・・なぜ急にこれ程まで攻めて来た?」
曹操軍は
その流れはとめどなく続き、打ち払っても打ち退けても止むことはなかった。
呂布が前面の苛烈な攻めの防ぎを務めていると、そこへ一報が届いた。
「呂布将軍。昨夜、赤兎馬が
「今さら?」と言わんばかりのこの報告に呂布は、
「ええい!そのような報を何故このタイミングで言う!どうせ、番人が寝ている間に手綱を切り、城の裏山に行って草でも食っているのだろう!―――そんなことはどうでもよいからお前も防備に当たれ!!」
と、報告者を叱る暇も持たずに前面からの防備を務めた。
『愛馬の心配をしている暇もない。』
それほどまでに今日の曹操軍の攻撃は苛烈であったのだ。
―――刻は流れ、馬の刻(=昼の十二時)を過ぎても、戦は終わりを見せなかった。
城外の濁水は赤い血が混じり、白雪には血液のシロップがかかって血のかき氷が出来ている。
濠が埋まらんばかりの死者が出ても、なお、曹操軍の城攻めは終わらなかった。
―――さらに刻は流れ、陽が西へ傾いた頃、ようやく寄手が少し退がった。
「・・・ようやく一段落したか。」
どっと疲れが出た。
朝から米粒一つ、水一つ口に含まずに戦い続けた戦がようやく少し落ち着いたのだ。
「少し奥で休む。何かあったらすぐに伝えい。」
前衛で奮闘を続けていた呂布は現場を離れ、閣へ下がると、一室の
これが命取りであった。
“一生の不覚!”
これが呂布にとってのそれであった。
(―――眠ったぞ。)
彼の眠りを部屋の外より窺(うかが)っていた二名は部屋内へと入り、抜き足差し足と音もなく彼に近づいて行く。
そして、寝ている呂布の背後に立つと、互いに目を合わせ、確認の合図と頷くと、寝ている彼を手に持っていた縄でギュッ!と縛り上げ始めた。
「あっ!? な、何をする!!」
縛られた瞬間、呂布は目を覚ました。
見るに、彼を縛り上げようとしているのは魏続と宋憲であった。
「き、貴様らーーーーッ!!」
呂布は暴れた。
背後にいる宋憲に対し、頭を振って後頭部を彼の顔面にぶつけ、椅子をクルリと回転させると、魏続の腹を思い切り蹴り上げた。
「「ぐおっ!!」」
呂布の攻撃に二名は床に倒れた。が、痛みを堪えてすぐに立ち上がると、再度、彼に飛び掛かった。
「く、くそぉ!このアホどもめ!!」
抵抗に成功した呂布であったが、彼は椅子と共に全身を縄で縛られており、身動きがまともに取れない。
さらにここで、
「皆!突っ込め!!」
と、魏続と宋憲は部屋の外に構えさせていた部下たちに号令を下した。
部下たちはどやどやと室内へと駆け入ると、吠える呂布に向かい飛び掛かっていく。
「こ、このクソカスどもがァーーーッ!うおおぉーーーーッ!!」
呂布は暴れに暴れた。
力の限り、最強の力を持って暴れ回った。
飛び掛かる兵たちを蹴とばし、自身に近づけさせなかった。
しかし、その抵抗にも限界はある。
彼らは次々と飛び掛かることで、ようやく彼の上に折り重なることが出来た。
一体何人飛び掛かったであろうか?
そして、一体何人が彼の上に折り重なることが出来たであろうか?
自由の利かぬ呂布を捕らえるために大勢の負傷者を出してしまったが、彼らは呂布を捕らえることに成功したのであった。
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