第396話 方針は安易に変えない
明日になっても呂布は立つ気配を見せない。
二日、三日過ぎても立たずにいる。
嫌な予感がした陳宮は、急ぎ足で呂布の元へ向かった。
「―――将軍、準備は整いました。何時出兵なさいますか?」
彼の問いに呂布は、
「ああ、あれか。・・・あれはもう止めた。」
と、悪びれなく、あっけらかんと彼に答えを返した。
「・・・・・・・・はっ?」
信じられない彼の回答に、陳宮は小指で耳の穴を
「―――将軍、準備は整いました。何時出兵なさいますか?」
「・・・陳宮、お前の耳は腐っておるのか?今言ったであろう?出撃は中止だ。遠くに出て戦うより、城に居て堅く守る方が利があると考えた。そのため、今回の作戦は中止とする。」
聞き間違いではなかった。
呂布の気まぐれはいつもの事であるが、今回の気まぐれは絶対に許されるモノではなかった。
『将兵、全兵の命運がかかった大事な作戦』
その作戦を気まぐれで中止されるわけにはいかぬと、陳宮は声を大にして彼の説得を始めた。
「・・・い、いやいやいやいや!将軍!何を言っているのです!先日も申しましたように、曹操軍は冬の戦の準備が満足に出来ておりませぬ!ここで城より打って出て、曹操軍に打撃を与えておけば、今後の戦を優位に進めることが出来ます!」
「・・・・・・・・」
「それに、今、許都よりおびただしい兵糧が曹操の陣地へ運送されているという情報が入りました!これを叩けば曹操軍は致命傷!彼らは冬の間、兵糧無しのホワイトハングリー生活を過ごすことになります!これこそ一挙両得!此度の戦果と合わせて我が軍の勝利は確実なモノとなりましょうぞ!!!」
「・・・もう良い。それ以上申すな。もう決めたことだ。」
「いえ!申させて頂きます!それに」
「もう良いと申したであろうが!くどいぞ陳宮!俺には俺の考えがあってのことだ!!!」
「しかし!」
「黙れ!何故お前はそう
「い、いえ、そのようなことは・・・。」
「ならば黙るが良い!先ほどお前が申した許都からの兵糧運送の件も、俺を城外へ出そうとする曹操の流言に違いない!そのような
呂布は陳宮の言葉に
「・・・ああ、これで我々の運命も決まった。後は滅びの道を歩むのみか。」
陳宮はそう言って、力なく、部屋を出て行ったのであった。
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