第389話 悪い日は何もしない

背後に近づき、ニヘヘヘヘへ!

お尻を触って、グヘヘヘヘヘ!

プスプス刺して、ウッヒャッホーーイ!

奇襲大好き、ポポポポーーーン!


 呂布軍の背後に迫り来た一彪の軍馬は劉備軍であった。


「あれは関羽だ!」


「もう一人は張飛だ!」


「「関張コンビが襲って来たぞ!!」」


 音に聞こえた関張が、軍のお尻(=背後)から刺し迫ってくる。

 しかも勢いが凄いと来たもんだ。

 呂布軍のお尻は赤く染まり、血煙が噴き出してきていた。


「いかん!お尻が攻められておる!すぐに体勢を整え、背後の敵を打ち破るのだ!!」


 呂布は、大いに動揺している兵たちをまとめ上げ、鶴翼の陣に備え構えると、


「兵たちよ!恐れるなかれ!この呂布がおる限り負けはせぬ!!」


 と、味方を鼓舞して劉備軍に打ってかかった。

 しかし、


 裏切り。

 同士討ち。

 奇襲。

 敗北。

 流浪。


 彼らは、この短期間で一体いくつの災難に見舞われたであろうか?


 心身共にボロボロの呂布軍の士気は低く、勢いのある劉備軍に全く歯が立たなかった。


「むむむ、このままでは戦にならぬ。―――退けっ!退くのだ!!」


 抜き差しならぬ状況に、呂布は歯噛みしながら退却命令を下した。

 そこへ、関張コンビが呂布に襲いかかった。


「死ねぇ!くたばれ呂布!今日ここで貴様の人生を終わらせてやる!!」


 迅雷の如く張飛は迫り行き、蛇矛じゃほこによる一撃を呂布に振り下ろした。


「甘いわッ!!」


 しかし、さすがは呂布。

 彼は張飛の蛇矛を斬りかえし、並の人間なら終了していたであろう人生を、終了させずにコンテニュー(=継続)した。


「さすがは張飛、気に食わぬが見事な武だ。」


「憎いお前を倒しい所だが、今日は日が悪い。―――引き上げた方が良さそうだ。」


「頼むぞ、赤兎せきと!!」


 呂布は、張飛、関羽と打ちあうことはせず、愛馬の赤兎馬せきとばに鞭打ち、直ぐにその場からサッと逃げ出した。


「待て、呂布!逃げるな!!」


「逃げる恥を知らぬほど愚かでも無かろう!我らと闘え!!」


 関羽と張飛は馬を走らせ呂布に迫ろうとしたが、彼らの馬と呂布の馬とは脚足がまるで違った。


「だめだ・・・あの名馬にはとても追いつけぬ。」


 駿足赤兎馬のはやい脚は、二人を瞬く間に引き離し、呂布の命を救ったのであった。

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