第357話 熱意を持って行動すべし

 古今東西場所問わず、戦をして、曹操ほど快絶な勝ち方をして痛烈な負け方をする英雄は少ない。


 そんな曹操の戦い方を、吉川栄治御大おんたいは『曹操の詩』と例えている。


 本小説で述べていなかったが、曹操は詩を愛する詩人である。


『詩を作るように戦に熱中する。』


 その情熱も構想も、詩を愛する詩人の心血に相似しており、詩人の熱意がそのまま戦に駆り立てられてるのが、曹操の戦いぶりである。


「曹操の戦は、曹操の創作である。――非常な傑作があるかと思えば、甚だしい失敗作も出る。だから、『曹操の戦は曹操の詩である。』」


 と、吉川御大は解説している。


 ――――ともかく、曹操は戦を楽しむ詩人であると言うことだが、「惨敗を喫して凹まないのか?」と問われればそうでもない。


 二度に渡る大敗を喫した曹操は、眉を曇らせペコペコに凹んでいた。

 しかし、そんな彼は、馬上で揺られながら、いつしか一編あんじていた。



梅干しっぱい、酸味だね。

敗戦酸っぱい、酸味だね。

違うモノでも似ているね。

心舌しんぜつ越えて、甘いねぇ。



 逆境を楽しもうという不屈の気力だけはある。


『決してネガティブにはならない。』


 曹操は瞳を燃やし、再起を計るべく、攻めの逃亡を始めるのであった。

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