第345話 急いては事を仕損じる

 袁術は寿春城から逃げ出しました。

 もうそれはびっくりするぐらい素早く逃げ出しました。


 東西南北の四方より攻めてくる敵もそうだが、それ以上に大きな問題となっていたのが前話でも述べた水害による影響である。


 この年、寿春地方は水害が続いており、その影響により穀物は熟せず、病人病馬が続出し、冬季の兵糧も心許ない状況であったのが逃走の一番の要因であった。

 で、この事態に大将の一人である楊大将が「寿春城を捨てて逃げましょう。」と提案したところ、これがまぁ何と言うかあっさりと可決してしまい、寿春城脱出に繋がったという訳である。


 寿春城を捨てるといっても、この城をみすみす敵に手渡すのは愚というモノ。

 そこで袁術は、李豊りほう楽就がくしゅう梁剛りょうごう陳紀ちんきを残し、十万の兵を彼らに預け、寿春城を守らせることにしたのであった。



 それから少し時間が経ちました~~~!!



 やがて、曹操以下、寄手三十万の兵が城下へと殺到したのだが、彼らの顔色は、皆、すこぶる悪かった。


「「つ、疲れた~~~・・・」」


 寿春へ近づくほど水害が酷い。

 田は泥海、道は泥没、村は泥泥。

 険しい道を歩み、ロクな補給もままならない進行。

 彼らは想像以上の疲弊を強いられていたのであった。


「――――これはマズイぞ。」


 寿春城下に着くなり曹操は頭を抱えた。

 というのも、食糧が全くないのである。

 遠征は荷物を軽くする必要があるので、兵糧を多く持ち運べない。


『敵の食糧を奪うか、近くの村と交渉するか。』


 必要なモノは現地調達が基本である。

 しかし、水害の影響により、これらが上手くいかず、彼らは無補給のままこの地まで進んで来ていたのであった。


「これほど酷いとは・・・私の計算にはなかった。」


 糧米総官の王垢おうこうに愚痴を言う曹操だが、このまま愚痴っても始まらない。


「・・・こうなれば一気に城を攻め落とすぞ!!」


 焦った曹操は寿春城への攻城命令を下した。が、それは失敗に終わった


 水害により兵馬の足は泥に取られてしまい、味方の動きは鈍く、敵の城の防備は堅い。


 容易に事が運ばないことに曹操は増々焦りを覚えた。


「このままでは食料が尽きてしまう。・・・急ぎ早馬を飛ばすぞ!!」


 曹操は呉の孫策へ当て、一筆したため、早馬を飛ばすのであった。

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