第317話 真っ向からは挑まない

『男は女に夢中になり、女は男に夢中になる。』


 曹操との会話にて、彼が鄒氏に夢中であることを確信した張繍は、知恵袋の賈詡にそのよしを耳打ちした。


「テハハハハ。それは良好ですな。これで兵を自由に動かせますぞ。」


「うむ。お前に相談して正解であった。・・・しかし、ここからが問題だぞ。曹操を守っている典韋を何とかしなければ、曹操を討つことは出来ん。・・・何か良い策はあるのか?」


 張繍の問いに、賈詡は、


「テハハ。もちろんですとも。無策で無茶は提案しません。既にゴールへの道は描かれております。ご安心を。」


 と、迷いの言葉は一切無く、堂々と勝利宣言をした。


「では張繍様。胡車児(こしゃじ)を此処へお呼び下さい。一つ、彼に尋ねたいことがございますので。」


 賈詡の言を聞いて、張繍は城内第一の勇猛と言われる胡車児を呼んだ。


「胡車児、お前は典韋と戦って勝てる自信はあるか?」


 賈詡が胡車児に問うと、


「恐れを知らぬ戦士の私ですが、あやつには勝てそうにありません。」


 と、迷いの言葉は一切無く、堂々と敗北宣言をした。


「テハハハハ。やはりお前でも無理か。・・・ならば、正攻法は止めて、不正攻法で曹操を討つとしましょう。」


 超情けない胡車児の発言であったが、賈詡はその発言は想定内であったようで、特に気にすることなく、胡車児を含めた三人で話を進めた。


「不正攻法だと?」


「はい。真っ向から戦いを挑むのは『正攻法』、変則的に戦いを挑むのは『不正攻法』です。胡車児が典韋に真っ向勝負で勝てないのなら、不正攻法で勝負を挑むしかありません。大変に情けないですがな。テハハハハ。」


「・・・・・・で、その不正攻法の内容は?」


「典韋は酒が好きですから、酒で彼を酔いつぶし、介抱する振りをして、彼から武器を奪い取るのです。そうすれば、胡車児は余裕で典韋に勝てるでしょう。・・・なっ?胡車児?」


「えっ!? ええ、まぁ・・・武器無しの典韋なら恐れることはありません。」


「とのことですが、張繍様、如何でしょうか?」


 賈詡の立案した策を聞いた張繍は、


「お前の案を採用しよう。すぐに準備に取り掛かるのだ。」


 と、急ぎ、酒宴の準備を始めたのであった。

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