第288話 足元にはご注意を
火計により涇県の城は
これにより、太史慈は北方の門より場外へと逃げ出すしかなかった。
まるで煙を嫌がって巣穴より飛び出して来た蜂のように、太史慈一行は城門を飛び抜けた。
するとそこには大勢の敵兵の姿が見えた。
彼が思ってた以上に・・・それはもう絶望的なほどに多かった。
「太史慈が出て来たぞ!奴を冬のナマズみたいに大人しくさせろ!!」
合図とともに、孫策軍は太史慈一行を八方より攻めかかった。
「「いやいやいや~~ん!やめちくり~~!!」」
闇夜の中に悲しき叫びが木霊する。
しかし、太史慈は怯まない。
「臆するな!中核を突破するのだ!・・・ハイヨー!シルバー!!」
得物を振り回し、孤軍奮闘する彼の姿に、
((おおっ!? 何と見事な猛将よ!殿が欲しがるのも無理はない!!))
と、敵であるはずの孫策軍の諸将は、皆、舌を巻いた。
――――やがて彼は一人で敵の囲いを突破して、孤独に馬を走らせていた。
「やんぬるかな・・・もはやこれまでか。」
(・・・故郷に帰り、再起を計るとしよう。)
心に決めた太史慈は、追手に見つからぬよう闇夜を駆けて江岸へと急いだ。
すると後ろから、
「待て!太史慈!逃げるな!大人しく捕まれ!降伏しろ!!」
と、声ある烈風が追いかけて来た。
十里、二十里走っても追いかけて来る。
しかし、足を止めるわけにはいかない。
彼は無我夢中で逃げ回り、気がつくとそこは、草が生え広がる沼地地帯であった。
この地方には沼、湖水、小さな水たまりなどが非常に多い。
しかも前述の通り、
(用心せねば・・・用心せねば・・・。)
失敗フラグをビンビンに立てながら、彼は用心深く沼地地帯を進んでいた。
すると・・・
「あっ!? しまった!!」
彼の駒は沼の泥土に脚を取られて転倒した。
あまりにも早いフラグ回収。
彼の体は沼に突っ込み、体の各部よりネチョネチョという音を立てるほどに、彼は全身泥まみれになってしまった。
『ドロドロになるのは夜の店のマットだけで十分である』(作者談)
太史慈は気持ちの悪い泥の重みに耐えながら、必死に立ち上がろうとした。
その時、四方の蘆の間から、たちまち熊手が伸びた。
分銅や鉤(かぎ)のついた鎖などが、彼の体に絡みつく。
『体に絡みつくのはローションプレイだけで十分である』(作者談)
「無念っ!!」
こうして、悪あがきを続けた太史慈は孫策軍に捕らえられてしまったのであった。
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