第十章 徐州の謀略戦
第247話 生半可な答えは許さない
十常寺→董卓→李傕と郭汜→曹操。
流浪の帝を手中に収めたことにより絶対的な権力を得た曹操であるが、大権を得たからといって無敵の存在になれるわけではない。
それは上記の大権の流れを見ても分かるとおりである。
『大権の力で限りなく無敵の存在に近づくこと。』
これが大事なことである。
当然ながら曹操自身もそのことは重々と認識していた。
大権を得たからといって彼は油断しなかった。
むしろ、以前にも増してその狡猾さを露わにし始め、彼は軍師、謀士たちを中心とした会議を毎日のように開いていた。
「――――劉備と呂布が恐ろしい。」
今、この国には多くの英雄たちがいる。
袁紹
袁術
公孫瓚
劉表
孫策(例外)
etc・・・
上記で述べた者たちは、皆、劉備と呂布よりも力を持った英雄たちであった。
しかし、曹操は彼ら以上に2人を恐れていた。
義に厚く、自分と同等の器量を持つであろう『劉備玄徳』。
智に乏しいが、抜け目のない狡猾さを持つ一騎当千の猛将、『呂布奉先』。
劉備はいつの間にか徐州の太守の座に坐っており、そして、呂布を
これはすなわち、劉備は呂布と手を組んだということと同義である。
正確には異なるが、少なくとも曹操はそう思った。
「奴らがこのまま結びついているのは、将来の憂いになる。・・・奴らの仲を裂く、何か良い策はないか?」
会議場にて、曹操が家臣たちに尋ねると、
「御大将。私にお任せ下され。精鋭五万を私に与えて下されば、奴らを木端微塵に粉砕して見せましょう。」
と、許褚が言った。
すると、一人の賢人が彼の勇気に釘を刺した。
「許褚殿。貴公の武勇は誰しもが認めるところ。しかし、勇猛と蛮勇を履き違えてはなりませぬ。今の貴公の言葉は蛮勇のそれですぞ。ははははは。」
釘を刺したのは荀彧である。
謀士らしい細い眼から許褚を眺め、彼は言葉を発したのであった。
荀彧に笑われた許褚であったが、彼は怒りの言葉は出さなかった。
それは、彼自身が荀彧の事を認めているのもあるが、餅は餅屋というように、策に関しては専門家である智者に任せた方が良いと知っていたからである。
だから、もし荀彧以外の智者が笑ったとしても彼は怒らなかったであろう。
荀彧の言葉を聞いた曹操は、面を彼に向けて問いかけた。
「許褚の勇気を蛮勇と捉えたが・・・ならば問おう。荀彧よ。お前は名案があるのか?」
曹操の問いに、荀彧は姿勢を正した。
生半可な答えは許さないという曹操の覇気を感じ取ったからである。
常人なら卒倒しそうな緊張感が漂う中、荀彧は自身の考えを述べるのであった。
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