第244話 欲しいモノは欲しい

 曹孟徳に全ての人間が従うわけではない。

 宮外には彼の言動に異を唱える者たちがいた。

 楊奉と韓暹である。


 洛陽を発し、許昌の地へ向かおうとする帝一行に対し、2人は兵を連れて猛襲してきた。


「待てっ!曹操!天子を盗んでどこへ行く!!」


 勇猛の臣である徐晃を先頭に、彼らは無謀にも曹操軍に戦いを挑んできた。


「ははは!こしゃくな奴らめ!・・・許褚!奴らをけちょんけちょんにしてこい!」


「了解!ガッテン!アイアイサー!許褚!行っきまーーーす!」


 曹操の命に応じ、許褚は鷲の如く立って、徐晃に自分の馬をぶつけて行った。



 許褚の武勇は絶倫であるが、徐晃の武勇もまた絶倫であった。


 許褚が槍を舞わして戦い挑めば、徐晃が大斧振るわせ迎え撃つ。


 両雄は五十合にわたり討ち合ったが、その決着はつきそうになかった。


(ほほう。噂には聞いていたが、徐晃という男、誠見事な男なり。・・・よし!)


 両雄の戦いを見守っていた曹操は、


「銅鑼だ!銅鑼を鳴らせ!ジャーンジャーンジャーンだ!!」


 と、何を思ったのか、突然、退却の命を下した。



「徐晃が欲ちい!!」


「「またですか!!」」


 会議場にて。

 曹操は、相も変わらずいつもの我儘っぷりを発揮していた。


「だってだって欲しいんだもん!あんな男、そうそういないぞ!武勇に優れ、大将としての器も立派なモノ!ああいう英材を欲するのは当然のことだ!・・・ってなわけで、徐晃を味方に引き入れたいのだが・・・誰か徐晃を口説ける者はおらぬか?」


 曹操の願いに対し、一名が、


「ではではその願い、私が叶えて見せましょう。」


 と、自ら進んで名乗りを上げた。

 山陽の人、満寵まんちょう、字は伯寧はくねいという者だ。


「満寵か・・・満寵、満寵、満寵か・・・よかろう!そちに命ずる!徐晃を口説いて来い!!」


 曹操は満寵に徐晃の件を任せることにしたのであった。

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