第195話 権力にしがみつかない
孤立無援。
絶体絶命。
危機一髪。
万事休すな状況に追い込まれた徐州に劉備率いる五千の兵がやって来た。
曹操の百万の兵による包囲網を突破してやって来た彼らを、徐州の人々は歓喜して迎え入れ、城兵の士気も上がりに上がった。
「ワーワーワーワー!」
「キャーキャーキャーキャー!」
「ピーピーピーピー!」
「フォーーーーーーーーー!!」
鳴りやまぬ歓声を一身に浴びながら、徐州の太守である陶謙は、援軍にやって来た劉備を自ら出迎え、
「義の人じゃ!貴殿こそ、まさしく義人である!今の廃れた世に貴殿のような義人がいたことを、わしは超嬉しく思いますぞ!!」
と涙を流して喜んだ。
陶謙は劉備たちを最上の礼を
そして同時に、とある事を劉備に提案した。
「劉備殿・・・来て早々、誠に急な話でありますが、今日からこの陶謙に代わって徐州を治めて下さらぬか?この通りでござる。」
そう言って陶謙は、徐州の太守の印を劉備に渡そうとした。
これにはさすがの劉備も驚き、
「・・・い、いやいやいや!急に何を言い出すのです!べ、別に徐州の太守になりたくてここまで来たんじゃないんだからね!そこんところ、勘違いしないでよね!」
と手を振って辞退しようとした。が、陶謙は一歩も引かず、長々と長台詞にて劉備に徐州の太守を務めるよう説得を始めた。
「劉備殿。あなたは帝王の血を引く立派な義人。それに比べ、わしはしがない唯の無能ジジイ。才能もなく、魅力もなく、草木も生えないペンペンジジイ。」
「こんなジジイが太守の位に恋々と就いていることは、次に来る新しい時代を遅らせる原因になりかねませぬ。」
「わしはもう七十を越えております。若い者に後を託し、その者に太平の世を築いてもらいたいのですじゃ。そして後を託すことの出来る人物・・・それは貴殿をおいて他におりませぬ。」
「・・・劉備殿。この死に掛けのジジイの願い、どうか聞いてもらえませんでしょうか?この通りでござる。」
長台詞を終えた後、陶謙は劉備に対して頭を下げた。
はるか年下の自分に対して頭を下げる陶謙の姿を見た劉備は、
(陶謙殿の言葉に偽りなし。世を憂い、民を愛する真の名君なり。)
と感服した。
しかし、感服したからといって、今回の件をすんなりと受け入れないのが劉備である。
「・・・陶謙殿。今回、私は陶謙殿を助けに来た者でございます。太守になりに来た訳では決してござらぬ。この件は後日にまた話し合うということで、今は徐州を護ることに専念しましょう。」
劉備は太守の件をさらりと流し、曹操との戦に備えるよう陶謙を説得したのであった。
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